第十三話 届かない
注意
この文章は作者が書いた文章をAIに添削してもらった上で投稿しています。
間違っても作者一人で作ったものではありませんので勘違いなきようお願いいたします。
『こいつをつけろ』
ラウズは青いグローブとヘッドギアを放り投げてきた。
僕はそれを受け取る。
『なんだこれ?』
『エレクスパー用の装備だ』
ラウズは肩を鳴らした。
『そいつが体を守ってくれる』
『守る?』
意味がわからず首を傾げる。
すると周囲から小声が聞こえてきた。
『おいおい……』
『あいつ、エレクスパーも知らねえのかよ』
『ほぼ素人じゃねえか』
『なんでそんな奴を連れてきたんだ?』
好き勝手言われている。
だが僕は気にしなかった。
とりあえずグローブをはめる。
続いてヘッドギアを装着した。
その瞬間だった。
バチッ!!
『うおっ!?』
全身に電流が走る。
思わず体が跳ね上がった。
そして次の瞬間――
僕の皮膚を覆うように六角形の光が浮かび上がる。
まるで透明な鱗だった。
『なにこれ……』
思わず腕を見る。
六角形の光が全身に張り巡らされていた。
『その膜が安全装置だ』
ラウズが言う。
『同時にデータ計測器でもある』
『データ?』
『見てればわかる』
ラウズが軽く足を鳴らした。
そして――
次の瞬間だった。
ドゴッ!!
『がっ!?』
視界が横へ吹き飛ぶ。
何が起きたのかわからなかった。
気づけばラウズの拳が僕の頬を捉えている。
『なっ……!?』
僕はよろめきながらも倒れない。
だがその直後。
ヘッドギアの耳元から機械音声が流れた。
《――破損率17%》
『……破損率?』
『聞こえただろ』
ラウズは何事もなかったように言う。
『その数値がダメージだ』
『100%を超えた時点で強制終了』
『つまり殴られれば殴られるほど不利になる』
なるほど。
僕はようやく理解した。
『つまりこの膜がダメージを受け止めてくれるのか』
『そういうことだ』
ラウズが頷く。
『ただし100%を超えた瞬間――』
ニヤリと笑った。
『電流が流れる』
『電流?』
『痛えぞ』
ラウズは肩を回した。
『滅茶苦茶にな』
僕は思わず笑った。
『面白いじゃん』
『そうかよ』
ラウズも笑う。
獣みたいな顔だった。
僕は構える。
さっそくパーリングを試せるかもしれない。
そう思った瞬間――
来る。
理由はわからない。
だが体がそう告げていた。
次の攻撃が来る。
しかも左だ。
『ワイルドブロー!!』
ラウズの豪快な左フックが空気を裂く。
僕は反射的に身を沈めた。
拳が頭上を通過する。
避けた。
だが。
(まだ終わってない!!)
本能が警鐘を鳴らす。
右が来る。
そう思った。
だから左腕に力を込める。
ガードを固める。
しかし――
違った。
『なっ!?』
ラウズの左アッパーが腹へ突き刺さる。
『ぐおっ!!』
体が浮く。
肺の空気が強制的に押し出される。
そのまま数歩吹き飛ばされた。
《――破損率21%》
再び機械音声が響く。
僕は腹を押さえながら顔を上げた。
ラウズは肩をすくめる。
『おいおい』
呆れたように笑った。
『そんなもんか、チャンピオン』
そしてニヤリと牙を見せる。
『わざわざ4%で抑えてやったってのによ』
(抑えてやった……?)
僕は眉をひそめた。
手加減された。
ラウズは確かにそう言った。
だったら――。
僕はさっそく練習してきたパーリングを試す。
相手の拳を弾き、その隙に大振りの左アッパーを叩き込む。
そのつもりだった。
しかし――
『下手くそなパーリングだなぁ!』
『っ!?』
次の瞬間。
僕の手が弾かれた。
いや。
弾いたはずの僕の腕が、逆に弾き返されていた。
(なに――!?)
理解するより先に、
パンッ!!
ラウズの左ジャブが頬を弾く。
『がっ!』
頬を打ち抜かれる。
体勢がわずかに崩れた。
だが――
次の瞬間。
ドゴッ!!
左ボディアッパーが脇腹へ突き刺さる。
『ぐっ……!』
肺の空気が押し出される。
(え?)
僕は思わず目を見開いた。
(なんでだ?)
確かに見えていた。
左フックを避けた。
次は右が来ると思った。
だから左側を固めた。
なのに。
飛んできたのはまた左だった。
(なんで左が二回来る?)
僕は拳を振るう。
届かない。
もう一度。
届かない。
何度振っても届かない。
目の前にいるはずなのに。
たった数歩先にいるはずなのに。
拳だけが届かなかった。
『あーあ』
誰かが呟く。
『こりゃダメだな』
『素人丸出しじゃねえか』
『マジで下手くそ』
『終わりだな』
『あれだけ啖呵切っておいてよ』
少しずつ野次が飛び始める。
耳に入る。
だが反論する余裕もない。
今回の相手は違う。
前回戦ったバウジーとは比較にならない。
強いとか弱いとか。
そんな単純な話じゃなかった。
見えている景色そのものが違う。
《ーー破損率44%》
機械音声が耳元で鳴る。
もう四割以上。
気づけば僕は一方的に削られていた。
このままじゃ負ける。
そう思った瞬間だった。
不思議と頭が冷えた。
焦りが消える。
悔しさだけが残る。
『なんだ?』
ラウズが口元を歪める。
『まだ続けんのか?』
僕は顔を上げた。
そして。
ほんの少しだけ笑う。
『続けるさ』
そう答える。
『あんたに勝つまでな』
リングの空気がわずかに変わった。
ラウズは一瞬だけ目を細めた。
そして。
獣みたいに笑う。
その笑みを見ながら、
僕は改めて理解した。
今の僕の拳は――
まだ届いていない。




