第十一話 僕より強い奴ら
注意
この文章は作者が書いた文章をAIに添削してもらった上で投稿しています。
間違っても作者一人で作ったものではありませんので勘違いなきようお願いいたします。
アルグジムのある街――ルールティ・ケット。
人口十万人を超えるこの街には、ニューボクシングを志す若者たちが全国から集まってくる。
その熱気と競争の激しさから、「挑戦者の街」とも呼ばれていた。
そんな街を今、初戦にしてタイトルマッチを制した男――リガは歩いていた。
目的地は一つ。
ステラ級ボクサーの聖地と名高いジム、《バロット》。
『そういえばハチローさん』
道を歩きながら、僕はふと思い出した。
『ハチブンジは大丈夫だったのか?』
一瞬だけ沈黙が落ちる。
だがハチローは苦笑いを浮かべるだけだった。
『娘のことは心配するな』
そして前を向いたまま言う。
『それより、お前は心の準備をしろ』
『心の準備?』
『今回世話になるジムはステラ級の聖地だ』
ハチローの声が少しだけ真面目になる。
『当然、強豪も山ほどいる』
『ステラ級って……』
僕は首を傾げた。
『僕がいるのはライト級だろ?
だったらライト級の奴らと戦った方がいいんじゃないのか?』
ハチローは大きくため息を吐いた。
『わかってねえな』
『何がだよ』
『ステラ級ってのはな』
そこで一度言葉を切る。
『脚光を浴びねえだけで、化け物が一番多い階級なんだよ』
『化け物?』
『クラウン級やアビス級へ行けなかった奴らもいる』
『だがな』
ハチローはニヤリと笑った。
『そいつらは夢を諦めなかった』
『何年も、何十年も、生き残り続けた』
『才能じゃなく執念で立ってる連中だ』
そして僕を指差す。
『お前より強い奴なんざ、腐るほどいるぞ』
『強い奴ねえ……』
正直、あまり実感はなかった。
自分で言うのもなんだが、僕は喧嘩が強い。
負けた記憶なんてほとんどないし、最後は殴り倒してしまえばどうにかなった。
今までは、それで十分だった。
だからこそ――。
ハチローの言う「僕より強い奴ら」という言葉が、いまいち想像できなかった。
⸻
ハチローから渡された金で地下鉄の切符――データカードを購入する。
改札を抜け、僕らは地下車両へ乗り込んだ。
車内は薄暗い。
乗客たちは互いに視線を合わせることもなく、ただ静かに座っている。
だが、その静けさの奥には妙な緊張感があった。
まるで火種だらけの火薬庫に放り込まれたような空気。
少しでもきっかけがあれば、誰かが暴れ出しそうだった。
『大丈夫か、リガ?』
ハチローが尋ねる。
『平気だよ』
僕は肩をすくめた。
『こういう空気には慣れてる』
『そうか』
ハチローは小さく頷く。
『気の弱いやつはこういう場所で目をつけられることが多い』
『だが、お前は心配なさそうだな』
『まあね』
僕は軽く笑った。
実際、喧嘩の匂いがする場所は嫌いじゃない。
⸻
車両に揺られること十五分。
僕たちはバロットジムの最寄り駅――《スナガ》へ到着した。
『着いたぞ』
『ふぅ……』
ハチローは胸を押さえながら息を吐く。
『相変わらず、この車両は心臓に悪いな』
『年じゃないのか?』
『ぶん殴るぞ』
『怖い怖い』
軽口を交わしながらホームを歩く。
そして。
地上へ続く階段を登った、その瞬間だった。
⸻
『……は?』
思わず立ち止まる。
目の前に広がっていたのは、ルールティ・ケットとはまるで別世界の光景だった。
巨大な立体モニター。
空中に映し出される映像広告。
街中を歩き回る丸いロボットたち。
色鮮やかなネオン。
絶え間なく行き交う人々。
どこを見ても情報と光で溢れていた。
『なにこれ……』
思わず声が漏れる。
『驚いたか?』
ハチローが笑う。
『……まあね』
僕は辺りを見回した。
『正直、同じ国とは思えない』
『だろうな』
『何に驚いてるんだ?』
『全部だよ』
僕は即答した。
『人も建物もロボットも』
『ルールティ・ケットとは全然違う』
『そういう街だからな』
ハチローは楽しそうに笑う。
『ここは技術と商業の街だ』
『金も人も情報も集まる』
『だから強いやつも集まる』
その言葉に、僕は少しだけ胸が高鳴った。
⸻
しばらく歩いた先。
一際大きな建物が姿を現した。
遠目でもわかる。
圧倒的な存在感。
歴史を感じさせる巨大な外壁。
壁には数え切れないほどの選手たちの写真が飾られている。
そして正面入口には、大きく刻まれた文字。
《BALLOT》
『……』
僕は思わず足を止めた。
『ここが』
ハチローがニヤリと笑う。
『ステラ級の聖地――《バロットジム》だ』
胸の奥が少しだけ高鳴る。
強いやつがいる。
僕の知らない世界がある。
そんな予感がした。
『さあ』
ハチローは入口へ向かって歩き出す。
『待たせちゃ悪い』
『行くぞ、リガ』
僕は小さく息を吐いた。
そして。
ステラ級最強の名門ジム、《バロット》の門へ足を踏み入れた。
この時の僕はまだ知らない。
ここで出会う男が、
僕のボクシング人生を大きく変えることになるなんて。




