22話 変な紙切れ
リブラ魔法管理局には立派な図書館がある。
年代は古い本から新しい本まで。種類は小説から画集まで。多くの本が広い空間に所狭しと並べられている。
その落ち着いた雰囲気と濃いインクの匂いは、やって来た人々の心を休ませてくれる。
「広いなぁ……」
そう、言葉が通じなくとも雰囲気だけで満足できてしまうのが図書館なのだ。
イオは訓練を終えた後、次の日の支度を済ませてから図書館にやって来た。誰かの薦めではなく、この図書館の前を通った時に入りたくなっただけ。
(……って、仕事中の先輩方もいるのか。これは静かにしないと)
図書館は、もう夕焼けの色で満たされていた。
他人の邪魔にならないように、イオは本棚の間をすり抜けるようにして奥へ向かった。
もちろん宛てはない。
その時のチョロチョロ動き回るイオは、まるでコウモリのように見えた。黒い影を引いて不規則にバタバタと動き回る様が酷似していた。
「ふう……俺はこういうのは好きじゃないな。雰囲気も息苦しいや。まあ、適当に魔法の本でも借りて帰るかな」
意味不明な文字列が本棚を埋め尽くす中、イオは挿し絵が付いてそうな本を探し回った。手に取っては開き見て、また取っては開き見て。
しかし、見た本は全て文字で構成されていた。
学術書のコーナーにでも迷い込んでしまったのだろうか。いやしかし、それにしても図の一つや二つくらいあるはずだ。
「我ながら運がない……こんなの書いちゃって作者は暇なのか? 文字ばっかり見てたら頭がおかしくなりそうだよ」
一冊一冊、懇切丁寧に手に取っては開きを繰り返していたイオ。もう目前の本棚で見ていないものはあと一冊だけになった。
「センスなしの俺が、一番借りてみたい本を最後に残しておいた訳だが……ん?」
この本棚で背表紙が一番分厚くて、絶対に絵が付いてそうな図鑑的な本を最後に開いた。
見てみると、イオの予想通り絵は付いていた。
しかし、本来は存在しないはずの別のものも付属していることに気付いた。
彼が順序良くページを見飛ばして中身を物色している時に、それが視界に飛び込んできた。
「……ん? 嘘だろ? 日本語? ってか、これって俺の字じゃないか!?」
ページとページの間に、少し新しめのメモが挟まれていた。変色の具合から見て、それは一ヶ月と少し前くらいのものだろうか。
いや、そんな推測はどうでもいい。
そもそもの話だが、日本語が書かれているメモなんて怪し過ぎるだろう。
それに筆跡にも見覚えがある。これは間違いなくイオの字だ。
しかもらそのメモには――
「これって……いくら何でも気持ち悪いぞ。いや、気持ち悪いってか――」
「いた! おーい、イオ君!」
メモを手に取り、おぞましい内容に目を通していたところにペルセウスが急にやって来た。彼の肩が上下していたので、かなり急いでいたと分かった。
イオは咄嗟にメモをポケットに突っ込んで、彼の方へ振り返った。
「ど、どうしたんですか?」
「アークトゥルスさんが呼んでる! 早く来て!」
どうやらとんでもない急用らしい。
ペルセウスは何も説明をしてくれなかったが、それだけは分かった。




