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A lot of stars  作者: 赤秋の寒天男
第四章 太陽の光
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18話 狼、がんばる

「……や、やぁっ! はぁっ!」

「あ~ダメダメダメ」


 ここはリブラ魔法管理局の裏庭。

 ペルセウスの頼みにより、シリウスとベルザはここで訓練を続行していた。どうやら今は火魔法の練習に励んでいるようだ。

 成果はあまり芳しくないようだが。


「余計な力が入っていますね。特に……ここ、脇腹の辺りかしら」

「そうですか……」

「そうなのよ。魔法というものは意識して出すものじゃなくて、強い感情に引っ張られて自然と出るものなの。焦りは禁物よ」

「分かり、ました……」


 ベルザは一応男ではあるのだが、なぜか徹底的に女言葉を話す。

 しかし、シリウスはもう慣れたようだ。彼の言葉の一つ一つを噛み砕き、徐々に自分の中に取り込んでいた。


「はい、もう一度やってごらんなさい」

「――はぁっ!」


 シリウスの手から放たれた炎は、やがて真っ赤な花に変化し、そのまま空へ立ち昇った。

 だが、魔法は勢いを止めなかった。


「あ、あれ……? ひ、火が消えません!」


 彼女は魔力の出力を誤ってしまったらしい。空に立ち昇った真っ赤な火は、一瞬にして真っ青な業火に変貌してしまった。

 そのあまりの勢いに、シリウスは怯えて尻もちをついた。


「――あらよっと」


 そこでベルザの出番がやって来た。

 と言うのも、彼は『火星』の名を冠する火魔法のスペシャリストだ。このくらいの火を抑え込むのに苦労はしない。


 さっと手をかざした途端、シリウスの手から漏れていた炎は見る見る内に小さくなって、やがてプツンと風船が割れるように消滅したのだった。


「すみません……ありがとうございます」

「こんなの気にしないことね」

「……あの、私には本当に魔法の才能があるのでしょうか? 何だかいつまで経ってもうまくなれない気がして……」

「才能があるかないかで言えば、断然あるわよ」

「ほ、本当ですか……?」


 行き当たりばったりで、いつまでも魔法が上達しないことに頭を悩ませていたシリウス。

 彼女はとうとう師であるベルザに胸の内を隠すことなく明かした。


 彼女は生まれついての天才で、獣化にも魔術にも適正があると周囲から称えられていた。

 しかし、それも遠い昔の話だ。実際にリオの戦場に身を置いてみると、全く別の世界があることに気付かされたのだ。

 繰り返される残酷な命の奪い合い、志半ばで倒れ行く仲間たち。隣国との戦争に巻き込まれ散っていった人間は数知れず。


 彼女は、強さに恵まれただけでは何も意味がないと脳に叩き込まれた。

 そして、戦争を知った日からは足掻くように鍛練を重ねた。少しでも歩みを止めれば死神に足を捕まれてしまう、そんな思いで必死に頑張った。

 だから、ここでベルザに誉めてもらえたのは少しだけ救いになった。


「火が青色になってるのは、あなたが魔法を十分に理解できてる証ね。あとは魔力の出し入れを徹底的に意識するだけだわ」

「そうなんですか?」

「えぇ、少し頑張ったくらいで成果を得られるなら苦労しないわ。継続することが大事なの、いい?」

「はい!」


 シリウスは小さくガッツポーズを決めた。

 そして、とある少年の姿を思い浮かべた。


(いつかイオみたいな魔法使いになるんだ……皆を守れる魔法使いに)


 この時、管理局のどこかで盛大なくしゃみの音が響いたのは、たぶんきっと気のせいだろう。

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