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役立たずのフルンティング

「突貫作業で99%ちょいまでは復元できた。あとは、今のお前とのリンクが再接続されるかどうかだ」

「……フルンティング!」


 駆け寄りたい衝動を抑えて、私は作業車の荷台から斜めに伸ばされたクレーンの先にぶら下がる相棒を呼ぶ。


 太いフックで吊られている抜身の剣は、無残に腐食し、手で触れただけで崩れそうな姿になっていた。


 「よし、ストップ! そのままゆっくり……ゆっくりだ……!」


 じれったくなるような低速でクレーンが旋回し、私の前まで剣を運ぶ。


 間違いなく私のフルンティングだ。


 初めて目にした時と同じ、鉄屑と呼ぶのも憚られるような、剣----の形をした何か。

『法王の剣』などという仰々しい呼び名とは真逆の、みすぼらしい物体。


 法王庁に納められてから私が手にするまでの長い間、この剣は由緒正しいだけのガラクタとして扱われていた。

 古代イングランドの叙事詩に謳われた剣のように、敵を斬る事もできない役立たずと称され、そこからフルンティングと名付けられた剣が、80年振りに私のもとへ帰ってきたのだ。


 その名のとおりの、大きいばかりの駄剣が----。


(いや、フルンティング、お前は役立たずなんかじゃなかった……)

  

 私は手を伸ばす。

 刃に指先が触れる。


 刃に指先を食い込ませる。


(お前は、私の相棒……私はお前でしか戦えない! だから、もう一度、その輝きを私に示して……!)


 鈍い痛みと共に、指先に血が滲む。

 その瞬間、刃の奥に小さな点のような光が宿った----。


「フルンティング、戻っておいで!」


 光点は幾つもに分裂し、輝きを増しながら剣の内側から全体に一気に広がる。

 剣を吊っていたロープが、バチンという破裂音と共に弾け飛んだ。


「おかえり……っ!」


 目に痛いほどの光を放ちながら、法王の剣は広げた私の両手の間に真っ直ぐ落ちてきた。


 生垣の向こうで息を潜めていた庭師達の声にならないどよめきの中、私は愛剣を握り、一振りする。


 準備は整った。


「では私はここまでだ」

 アンソニーは自分の足元を指差す。


「ここから先、お前達が歩みを進めるたびに踏み締めた土は全て不浄のモノとなる……そんな土を付けて猊下の御前に戻る訳にはいかないからな」


そう宣言すると、くるりと踵を返した。

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