血と肉
血と肉。
それは、これまでに何度も聞かされてきた言葉だ。
魔女は、決して不老不死の存在などではない。
そもそも、魔女という存在の定義すら実は明確ではない。
魔女として裁判にかけられた女達のうち、常人とは異なる瞳や髪の色を持つ者もいたが、ほとんどの魔女は普通の人間と全く見た目が変わらない者ばかりだった。
薬草を調合したり星を見て占いをしたりする事は、現在では大っぴらに行われているらしいが、それを生業としていると知られただけで命を奪われたのが、あの魔女狩りだった。
魔女とは、そのほとんどが、世間一般よりも多い知識を持ち、それによって物事を解決する職業の総称、と言ってしまって良いだろう。
人間であり、命あるものである以上、いわゆる魔女ですら老いとその先に待つ死を必ず迎える存在でしかない。
巷間でまことしやかに流布されているような、妖の力を持つ者などは、いないのだ。
ただ、ごく僅かな、本当に僅少な、朝の浜辺に打ち上げられた琥珀の欠片のような例外を除いて----。
そう、例えば、その血と肉で己の主人を生き永らえさせる事ができるならば、それは、つまりは、その者は魔女なのだろう----。