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『なぁ、坊ちゃん、これだけは覚えておいてくんなせぇ』
お城の中庭で、年老いた片目の園丁はよくこう言ったものだった。
『いいですかい? 森の中でたった一人でいる別嬪さんに出会ったら、その時は礼儀正しく挨拶だけをして、絶対に喋っちゃいけませんぜ?』
どうして? と幼い僕は首を傾げる。
どうしてそのきれいな人とはお話ししちゃダメなの?
『そりゃ坊ちゃん、森の中にそんな別嬪さんが一人でいる訳ないでしょうが』
ここで必ず園丁は、芝居じみた動作で僕を両手で掴むふりをするのだ。
『いたらそれは、魔女でっせ……魔女は普段は森の奥にいて、人間を食べる時にだけ姿を現すんですわ……だから食べられる前に、一目散にお逃げなせぇ』
僕はそこで息を呑み、拳をぐっと握るのが常だった。
『絶対に……絶対に、魔女と言葉を交わしてはいけませんぜ? そんなことをしたら最後……坊ちゃんは、魔女の餌になっちまいますからね?』




