69/398
少女の落胆
夕食を終えたらシャワーを浴びるのだと言うので、私はメリッサを浴室まで連れて行った。
「えー、ここってシャワーないの?」
石造りの浴槽の前で少女はがっくりと肩を落としていた。
「お風呂も好きだけど……シャワーもないなんて、なんだかこう……ザ・中世って感じ……」
「確かに昔からほとんど変わってないからね……あ……なんか、ごめんね……?」
四百年くらい前からこの地下の構造はほとんど変わっていないので、中世呼ばわりされても反論の余地もない。
私がここへ招いた訳ではないけれど、先に住んでいた者として、不便な思いをさせてしまうのは心苦しい。
そのまま寝かせるのも可哀想だ。
「えっと、その……代わりと言ってはなんだけど、今からお風呂、入れてあげるわよ」
そんなつもりはなかったのだが、私は腕捲りして宣言していた。
「だからお湯を沸かすの手伝って」
「やった!」
心ならずも共同作業を行わなければ、この中世で時が止まった空間での生活はままならない。
これもまた、他人と暮らすという事なのだ。
(やれやれ、なんだか調子、狂うな……)
朝から何度目かもう数えていない溜息を吐いて、私は湯を沸かす準備をするため、どこかにあるはずのエプロンを探し始めた。




