表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/381

庭師

 驚く事に、少女が一人ではないという事を今の今まで私は全く失念していた。


男は金色の大きなランタンを顔の高さまで掲げた。

 見たところ、五十代といったところか。

 眼鏡をかけ、痩身で白髪という外見は、聖職者というよりも学者然としている。

 ただ、高い場所から人を見下ろす様子が板についているところを見るに、恐らくは貴族の出身だろう。

細かな装飾の施されたランタンは、多分、呪具だ。


「貴方が、新しい庭師なの?」

「あぁ、私が新しい庭師だ……毒の花を囲い、毒の蜜が地に流れる前に、その花を刈る者だ」


 いつから始まったのかは忘れたが、彼ら庭師は皆魔女に向かってそう仰々しく宣言する決まりになっているようだ。


 法王庁には私達魔女を管理するための極秘の部署がある。

 最高責任者は----法王。


 もちろん法王が直接魔女のいる温室に来る事などありえない。

 大司教以下選抜された聖職者のみがこの中庭への立ち入りを許され、魔女を見る事ができる。


 彼らは庭師と呼ばれ、魔女の存在の秘匿ならびにその『有効活用』の実践のために日夜励んでいる----らしい。言うなれば魔女の生殺与奪の権を握っている。


「ただの庭師じゃなくて、『棟梁』自らがお出ましなのね」


 司祭枢機卿に向かい、私は唇を歪めて見せる。

 聖なる庭に建つ温室の底へ高位の聖職者がわざわざ降りて来るなどという事は、法王庁にとってあまり好ましくない事態が起こったとしか考えられない。


「でも、もう私を上に出しても無駄だと思うわよ?」

「己惚れるな、なりそこない」

 男は唾を吐き捨てるかのように言った。

「お前に用はない……我々が必要としているのは、そこにいる魔女、メリッサのみだ」

 男に指さされた少女は、目をぱちぱちとしただけだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ