はじまりの魔女
「私は……魔女なんかじゃない……!」
私は叫んでいた。
「魔女なんかじゃないし、それに……貴女は、あの女……モルガナじゃない!」
少女は驚いた顔で私を見た。
数秒前まで感じていた圧倒的な存在感は、その身体にはもう片鱗すら漂っていない。
それが何故か無性に苛立たしい気持ちになる。
「……早くここから出なさい」
立ち上がり、思わず一歩前に出ていた。
「こんな所にいたら、魔女に食べられるわよ?」
そうだ、これは遠い昔に私が弟に言った言葉だ。
私がまだ人間だった時の----。
こんなのは茶番だと思っているのに、心臓はまだ跳ね続けている。
(いや、そうじゃない……確かにさっき、私は感じた……モルガナの力が、私に流れ込んで来たのを……)
少女は怯える風でもなく、私を見上げている。
その目と目が合った。
そして、今度こそ私は理解する。
「私を食べられる魔女なんていないわ」
幼い声。
なのに、妙に明確に、断定的に少女は言う。
「だって、私がはじまりの魔女なんだもの」
ザザ……ッ!
草が揺れた気がして階段の上を振り仰ぐと、
司祭服姿の男が立っている事に、私はようやく気付いたのだった。
「やはり引き合うものなのだな……魔女と魔女というものは」