惑星監督官としての、私
「はは、このまま二人で死んじゃったらどうなるのかな……」
ふと、メリッサが呟く。
特に怖がる様子もなく、何となく思い付いた、という感じで。
「それは、ないと思う……ほら、私、歴史の自己修復性を信じてるから」
「楽観論的な意味で?」
そうね、と私は言葉を探す。
「何となくだけど、それがいわゆる『神』と言われるものなのだとしたら、私は『神』を信じている、って事になるのかな……?」
まとまらない思考の中で、それでも私は、メリッサを安心させたくて、懸命に喋り続ける。
「外の気温、今どのくらいかな?」
「逆に急に上がってきてる気がする……」
しっとりと汗ばんできているせいで、二人の身体が余計に密着して----ドキドキしているのは私だけではないと思いたい。
オリハルコンは熱や圧力では破壊されないが、もしかすると、時間の急速な流れや捩れには弱いのかも知れない。
カプセルにかかる圧力と地震の衝撃波で西暦2026年に転移を行う、とマヌエルは言っていたけど、そのタイミングは、ぶっつけ本番だ。
怖くない訳がない。
いや、今更だけど。
「……私、死ぬ、って、正直よく分からないんだよね」
「……あんなに殺してきたのに?」
ついストレートな感想を述べてしまうが、メリッサは寂しげに微笑んだだけだった。
「死ぬのと、殺すのは違うよ……」
そうだよね。
私達は、もしかすると今回初めて「ちゃんと死ぬ」のかもしれない。
ちゃんと死ぬのがこんなに難しいなんて、知らなかった。
眠りは小さな死の連続とは言うけれど、そこから毎朝目覚められる事が、実はどれほどの奇跡だったのか、私は改めて感心する。
本当の事を言ってしまえば、このまま二人で目覚めないのが、一番幸福な気もする。
でも、私達は、この世界の歴史に手を付けてしまったのだ。
だから----その責任は取らなければならない。
戻った先で何が起きたのかをちゃんとこの目で確かめなければならない。
何故なら私は、この星の惑星監督官マリアなのだから----。




