封印
「何を言ってるんですか!? そんな真似私に出来る訳が……!!」
「貴女しかいないの! 補佐官の貴女なら封印の方法を知ってるでしょ!?」
フォルトナが、ほとんど悲鳴のような叫びを上げる。
「無理です! 私は補佐官なのですよ!? 貴女を護るのが私の役目です!!」
地鳴りの音が少しずつ大きくなってくる。
今、地上にはミレニアムへと意識を転送され、身体だけを残した住民達が横たわっているのだろうか。
「……フォルトナ、貴女は私に取り返しのつかない裏切りをしたわよね?」
「な、何を……?」
明らかに動揺しているフォルトナに、私は畳み掛ける。
こういうやり口は好きではないが、仕方ない。
「巫女であるメリッサが一人だけ残される事も、いずれは『黒化』する事も……その『玉座』にメリッサを入れる事が私の成人の儀だというのも……知っていたのに、黙っていた……そうでしょ?」
「それは……貴女を……悲しませたくなかったから……」
フォルトナの手が震えている。
「それだけ……?」
「……いいえ……それだけではありませんわね……私は……私は……そう、メリッサさえいなければ、また貴女と私の二人だけになれると思って……」
アネモネのメッセージは全て真実だった。
それだけ分かれば、もう充分だ。
「……話してくれてありがとう、フォルトナ」
地面が少し揺れた。
数秒おいて、また揺れる。
「でもね……今の話、私は未来の貴女からもう聞いてたの……だから貴女を恨んだり嫌いになったりはしてないわ」
だから、と私は続ける。
「貴女がこれから先、一万年も後悔に苦しむ必要なんかない……大切な人が取り返しのつかない失敗をして、それを悔やんでまた更に失敗を重ねていく……私はもう、そんなのは二度と見たくないの……!」
「……未来の……私……?」
見開いたフォルトナの目から、涙が一筋流れた。
「……許して欲しいなんて言いません。でも、出来るならば……どんな形でもいい、私は……貴女と一緒の未来に……行きたいです……」
揺れが少しずつ大きくなってくる。
地鳴りが身体を伝わってくる。
「マリア、私、やります……貴女と、あと、メリッサと一緒に未来に行くために……!」
「ありがとう」
私は、フォルトナを片手で抱き締めた。
「また未来で会いましょう、フォルトナ」
カプセルに入って、私はメリッサを抱いて椅子に座った。
「マリア! メリッサ! またお会いしましょう……未来で、必ず……!」
フォルトナが、涙で顔をびっしょり濡らしながらカプセルの蓋を閉める。
一呼吸置いて、重い音が響いた。
カプセルの色が透明から白に変わり、封印がされたのだと知る。
私はメリッサを抱く手に力を込めた。
もう、この『玉座』が開く事はないだろう。
人知れず青いエーゲ海の底に沈んだまま、いつの日か朽ち果てるまで----。




