誰も降参で勝った者はいない
『私が、貴方の使い魔……!?』
弟の言葉があまりにも衝撃的で、私はしゃがみ込んでしまった。
『……うん……姉上は魔女じゃなくて、僕の……使い魔……です……』
『信じられない……! だって使い魔なら、自分の主人には絶対服従のはずよ? あのメリッサの蟹みたいに、呼ばれたら何処にでも駆け付けて巨大化したり、身を挺して主人を守ったり……って、そもそも自分の主人に剣を突き付けて追い払った使い魔なんている!? そんな使い魔、危なくて使えなくない……!?』
混乱のあまり、自分で何を言っているのかよく分からない。
『で、でもッ! 姉上は、『知恵ある女』という意味での魔女ではあると思うし、あのフルンティングを扱えるのは姉上だけだし……っ! 何よりもメリッサには不可欠な存在だから、使い魔とは言っても、雰囲気は僕なんかよりずっと魔女らしいし、法王庁には魔女として登録されてるから、その……大丈夫! ほぼ魔女だから……!!』
『……もういいわ、とりあえず分かったから』
マヌエルはマヌエルで、なんとか慰めようとしてくれているようだが、却っていたたまれない気分にしかならない。
『……ありがとうご主人様』
私は立ち上がり、礼服の膝を手で払う。
『慰め方が下手な所は、昔とちっとも変わってないわね』
『……怒らないの?』
私は微笑んだ。
『怒らないわよ。これまでにもう充分怒ったんだもの……それに、貴方のおかげで勝ち筋が見えたかもしれない……』
私が弟の使い魔だというのは、心情的には受け入れがたいが、マヌエルが魔女である以上、彼の『力』で生き返った私が使い魔なのは、理論的には正しい。
そして実際問題として、魔女もどきの今の私には、この状況に対して一つも打つ手がない。
であれば、使い魔として動けば良いのだ。
----そう、誰も降参で勝った者はいない。
『つまり、貴方が私に命じてくれればいいのよ、今すぐ『玉座』の前に行きメリッサを止めて、フルンティングとアネモネ……じゃなくて、フォルトナを召喚しろ、その間に僕はアトランティスの住民達をミレニアムに転送する! ってね』
『なるほど……さすが姉上、切り替えの速さがアスリート並みだ』
よく分からない感嘆の言葉の後、マヌエルはおもむろに咳払いした。
『ならば命じる! 我が使い魔モルガーナよ、今すぐ『玉座』の前に行き、メリッサを止めてフルンティングとフォルトナを我の代わりに召喚せよ……!!』
『仰せのままに! 我が主人!!』
応えた瞬間、私の身体は眩く輝く白い光に包まれた----。




