決断
私は、そこで思い出した。
『マヌエル、貴方……私がアネモネを灰にした時……いや、溶解する前に、彼女のデータを全部サルベージしたでしょ?』
『ははっ、僕はまだまだ姉上には敵わないな……全部お見通しって訳だね』
どこか嬉しげな声に、私は確信する。
『バーチャル救済システムミレニアムは、世界首都ゲルマニア計画を元にした仮想空間だった……そこへフォーブス400の富豪達は意識だけ転移させて、聖杯神殿でアネモネのコピーに祈りを捧げてた……』
『でも、あの聖杯神殿もミレニアムも、カーラの作ったウィルスで全滅したじゃない? フォーブス400の富豪達ごと壊れちゃったの、姉上も見たでしょ?』
だが、私には分かる。
マヌエルは昔から模型や図面の類を眺めているのが好きな子だった。
だから、せっかく手に入れた壊れた都市をそのまま放置しているはずはない。
『今、アトランティスには1200万人の市民がいるの……彼らの意識をアバターに移して、全員貴方のミレニアムに避難させてくれれば、マキナが停止しても問題ないわ』
『……確かに姉上の言う通り、僕はあのミレニアムを修復して持ってるよ。アバターもすぐ使える……でも、アトランティス以外の、キュアノスや他の惑星の人間は? 姉上は、マキナがないと生きていけないような人間は見捨てるの?』
容赦のない、だけど当然の問いだ。
『それは……』
出来るなら彼らも全員マヌエルに託したい。
だがアトランティス人は地球人で、他の惑星機構の人間は、あくまで異星人だ。
地球人を含めた様々な種族の異星人を、突然一箇所に集めてしまったら、何が起こるのか想像がつかない。
私が変えたいのは、私達の過去だけであって、全宇宙の歴史を改変してしまうなど、あってはならない----。
だったら、マキナの停止という手段は捨てる。
『……私は、絶対に諦めない』
0か100かという選択に固執しなければいいのだ。
私は、姉だ。
ここまで来てくれた弟を信じる。
『……だから、一分……いいえ、三十秒でいい! この塔のシステムだけ、マキナから隔絶状態にして!!』




