輪舞曲(ロンド)
どうして私は、この螺旋階段を駆け下っているのか。
どうして私は、必死にメリッサの後ろ姿を追っているのか。
今更ながら湧いた疑問が、私の記憶を呼び覚ます。
(そうだ! これから起こる事を、私は全部知っている……!!)
「メリッサ! そこへ行っちゃ駄目っ!!」
くるくる。
くるくる。
メリッサは止まらない。
私の巫女は、まるで終わりのない螺旋階段を、舞うようにして駆け下る。
私を導くように。
私を拒絶するかのように。
くるくる。
くるくる。
彼女は、私を何へと導き、何から拒絶しようとしているのだろうか?
その答えはもう分かっていた。
このオリハルコンの螺旋階段は、駆け下るためだけにはあまりにも長すぎる。
しかし、メリッサが私のために舞っているのだと、そう得心すれば----この螺旋階段は神殿の舞台そのものだった。
巫女メリッサのためだけの、唯一無二の舞台だった。
全てを知ってなお、己に与えられた役を舞うための、用意された舞台だった。
くるくる。
くるくる。
着想はたちまちに確信へと変わる。
黒が白へと、白が黒へと、鮮やかに裏返る。
正位置から逆位置へ。
晴天から驟雨へ。
過去から未来へ。
空から海へ。
くるくる。
くるくる。
永い永い時の中で、私と、もう一人の私が何度も何度も交差する。
私は知ってる。
この感覚を知っている。
何度も何度も、私はこの螺旋階段を下りながら、メリッサに追いつこうとしている。
あの夜の森で獣に胸を刺された時----?
ベルリンの地下壕で意識を失った後----?
アンソニーが法王に選ばれた瞬間----?
いや、もっと前から、私は何度も何度もこの螺旋階段を下っている。
未来から過去に戻って、何度も何度も----。
知っている。
人間は未来へは行けたとしても、過去へは戻れない。
私は人間。
人間は過去へと戻れない。
だからこれは夢なのだ。
この忌わしい夢の中で、私とメリッサは数え切れない程、呪われた輪舞曲を繰り返している。
くるくる。
くるくる。
今度こそは止めなければ。
夢であっても、止めなければ----。
終わらない夢なら、現実と同じ事なのだから。
追いついて、止めて、そして----。
くるくる。
くるくる。
「メリッサ! お願いだから! もう私のためなんかに死なないで……ッ!!」
私は、決して届かないはずの手を、思いっ切り伸ばして叫んだ----。




