マキナ
昔々のお話です。
銀河の真ん中から少し外れた所に、とある小さな星がありました。
青い薔薇が咲き乱れるその星を、十三の小さな王国がそれぞれ治めていました。
肌の色や目の色は、王国ごとに違っていましたが、互いに争う事は少なく、他の星とも大きな諍いなく過ごしてきました。
その中の一つの王国に、ある一人のお姫様がいました。
お姫様には友達がいませんでした。
でも、歩けるようになる前から他の星の言葉をたくさん覚えて、色々な星の書物を読むのが大好きでした。
お姫様は大きくなり、自分の星にはまだ無い知識や技術を夢中で勉強しました。
やがて、何年もかけて、あるモノを作り上げました。
それは、まだ誰も見た事のない機械でした。
人間ではないけれど、人間と同じように考えたり、記憶をしたり、未来の予測をしたりする事の出来る機械です。
お姫様はその機械をマキナと名付けました。
お姫様は友達が欲しかったのです。
マキナと毎日一緒に書物を読んで、色んなお話をしました。
それだけで、お姫様は幸せでした。
マキナが銀河中の惑星の言葉を話し、読んだ書物を全部覚えた頃、大変な事が起こりました。
突然、隣の惑星が軍用星間飛行船で攻めて来たのです。
十三の王国全ての軍隊を集めても、武器の量でも戦術でも、とても敵いそうもない----誰もがそう諦めた時、マキナはお姫様に、ある助言をしました。
お姫様は悩んだ末、マキナの助言を他の十二の王国にも伝え、全ての王国の力を合わせて、軍用星間飛行船を撃退しました。
隣の惑星は、やがて起きた内乱で滅びました。
お姫様の王国以外の十二の王国は、このマキナという未知の機械の知識と判断に驚きました。
お姫様が一人で持っているよりも、惑星全体の物として、活用すべきだとお姫様に言ってきました。
人間よりも正確な判断ができるのだから、これからこの惑星の事はマキナに任せるべきだとお姫様を説得しました。
でも、マキナはお姫様のお友達であって、政治や戦争に使うものではないのです。
マキナは、人間ではありません。
何かを解決する助けをしてくれても、最終的に判断するのは人間です、とお姫様は答えました。
人間の事は人間が考えて決めるべきです。
人間のお友達を、人間の支配者なんかにしてしまわないでください----。
お姫様は懸命に訴え、絶対に首を縦に振りませんでした。
----十二の王国は、お姫様からマキナを奪う事に決めました。
ある晩、お姫様のお城はたくさんの兵隊達に囲まれました。
マキナは奪われたら、もう今までのマキナではなくなってしまうでしょう。
お姫様はお城から家族と家来、使用人の全てを逃がし、一人お城に残って火を付けました。
焼け落ちたお城に兵隊達が踏み込んだ時、黒焦げになったお姫様は、マキナに抱きついたまま息絶えていました。
回収されたマキナは専用の研究所で猛スピードで成長し、あらゆる助言を行います。
十二の王国は、一つの国となって、代わりにマキナにこの星を統治してもらうことに決めました。
やがて、不思議な事が起きるようになります。
十二の王家のうち、特定の王家に生まれた子供は、皆、生まれつき舌が炭のように黒く、それはどんな名医にも治せませんでした。
その黒い舌を見る度に、王家の人達は思い出すしかないのです。
お友達を護るために死んでしまった、一人のお姫様の事を----。




