とある魔女の告解 file5
巫女の本当の役割と、その末路を始めから知っているのは、マキナと補佐官、そしてごく一部の関係者と、旧第一王家の限られた者のみです。
私は就任式の前日に、マキナより直接告げられました。
塔の階段を下りた一番下の装置にメリッサを寝かせれば、歌っている状態の脳波を常に発生するよう自動的に『処置』がされる。
あとは塔が増幅装置となって、メリッサの脳波は惑星全体に拡散され、代わりに住民から『悪意』だけが吸い上げられていく、という説明を、私は無感情で聞いていました。
『黒化』してしまったらどうなるのか、と私は聞きました。
監督官はキュアノスに帰還しても、巫女とのリンクは生涯生きてきます。
しかし、巫女が『黒化』した瞬間、監督官の脳を守るため、二人の間のそのリンクは、マキナによって強制切断されるのだそうです。
それでもその刹那に、監督官が触れる巫女の意識は強烈なものらしく、監督官は場合によっては『調律』と同じような治療を受け、一生罪悪感を抱えて生きる事になるのだ、とマキナは回答しました。
ただし、それを王家の人間達は当然の事として受け入れているのだとも……。
マリアもそうなるのだろうかと思うと、私は不安になりました。
だから聞いたのです。
一抹の期待を込めて。
この惑星……地球には資源が豊富で、マキナのデータセンターも幾つも作られているのに、『黒化』したメリッサによって使い物にならなくなってしまえば、惑星機構にとっては大きな損失になるのではないか、と。
この時、私はメリッサの心配などは微塵もしていませんでした。
いえ、もっと正直に言えば、嬉しさすら感じていました。
マリア……貴女と2人だけでキュアノスへ帰還できるという事だけで胸がいっぱいでした。
マリアがその後どうなるかだけが気がかりでした。
私の問いに、『黒化』の予兆が計測された時点で『処分』し、代わりの『巫女』を送る方法が確立した、とマキナは答えました。
恐ろしいとは思いませんでした。
多分、私は笑顔だったと思います……醜いくらいに、……。
私はもう、魔女になっていたのだと思います。
あれほど憎くて消したくて堪らなかったマキナというシステムに、生まれて初めて感謝したのですから……。
あの、ごめんなさい、少し頭が……ぼんやりしてきました……。
そう、あと……今のうちに、伝えておいて欲しいのです……カーラには、本当に感謝していますわ……こんな私のために、大切なデータの一部を削ってまで容量を空けてくれて……。
ええと……私、どこまでお話しましたか?
……そうでした、就任式の日に、何があったのかをお話しなければ……終われませんわね……。
私は、この事をとうとう最後まで貴女に伝えられないまま……あの日を、就任式を、迎えてしまったのです……。




