とある魔女の告解 file4
……申し訳ありません、 時間が迫って来たようです、ワクチンが、そろそろ持たなくなってきました……。
手短にお話します。
当初、惑星機構は惑星監督官と補佐官だけを赴任先の惑星に送り込んでいました。
実際には、惑星監督官は現地の住民に対しての指導者的立場のみを担っており、土地の改良や住民への技術指導、生活環境の整備……あと、いわゆる民主主義的思想の浸透などは、マキナの『提案』を受けた補佐官が現地民の協力(内容については帰還後に『調律』を受ける必要があるという事から察して頂けると助かります)によって実施されていました。
これが惑星の統治であり、完了したと判断された時点で、その惑星は、独立した一つの星として惑星機構に組み込まれます。
しかし、実際には、その惑星はキュアノスの植民地でしかありません。
マキナという生活の全てを管理する巨大なシステムの下、マキナのために資源を大量に採掘し、キュアノスの住民のために食料品や日用品を生産さ続ける日々が続きます。
住民達は不満を募らせ、やがて数世代が経過する頃、惑星機構そのものへの憎悪を抱きます。
こうした惑星のうち、幾つかは離反し、またキュアノス首都でのテロリズムを行う者も出てきました。
これに対し、マキナは数パターンの解決策を講じました。
そして、住民の『心』を操作する事で惑星機構への反抗心を無くすのが最適解である、と結論付けたのです。
その方法は、生身の人間を……特殊な『力』を持った者を選び、惑星中から『心』、正確には、より効率よく、負の感情、つまり『悪意』のみを直接吸い上げて浄化させるというものです。
キュアノスでは『心』を持つ人間の中に、稀に他の人間の脳波を操作できる脳を持つ者が存在します。
ホルダという魔女を覚えていますか?
彼女の歌は兵器として使われる程に強力な『力』であり、実際に人間の脳を破壊するほどでした。
裏を返せば、あの『力』は制御さえ可能なら人間の特定の脳波の活動を抑える事も、吸収する事も出来るのです。
マキナはこの『力』を持つ者に、惑星中の人間の『悪意』だけを吸収させる事にしました。
ただし、悟られては意味がありません。
そのため、その『力』を持った者を『巫女』と称して惑星監督官の『心』に同調させ、付き添わせました。
そして……監督官の帰還後も惑星に残して住民達の『悪意』を吸収させ続けたのです。
惑星監督官はキュアノスに戻っても、巫女の『心』を通して惑星の住民の様子を常に知る事になっていました。
巫女が『悪意』を吸収している間は、住民は惑星機構に従順です。
しかし、どんな『力』にも限界はあります。
人々の『悪意』を取り込み続けた結果、巫女は、やがて限界を迎えて、変異します----『黒化』するのです。
一面の黒に染まるのです。
髪も。
瞳も。
素肌も。
爪先まで。
貴女がベルリンの地下壕で見たように。
これまでに引き受けてきた人間の悪意を凝縮させた、生きた漆黒の結晶に変容するのです。
そう、魔女の残忍さ……魔女の本質そのものと化すのです。
貴女が見たあの黒い魔女は、本来巫女だったモノの、成れの果てなのです……。




