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見えない棘
メリッサは、巫女という立場である以外は、他の普通の幼女と何ら変わりなく見えた。
年相応に笑ったりはしゃいだりする姿を見ると、あの夜の広場での出来事が、遠い夢だったかのように思えてしまう。
(でも、私のあの薔薇は、この子の胸の中に入ってるんだ……)
誰にも咲かせられなかった蕾。
呪いが掛けられていたという蕾----。
その蕾を、この幼い少女は見事に咲かせた。
恐らくは、いわゆる『魔法』を使って----。
(呪いって、あの蕾が咲かないように、って事よね? そんな呪い、誰が掛けたんだろう……?)
呪いを解いたのは本当に魔法だったのか、そもそも呪いの目的は何だったのかなど、メリッサに詳しく聞いてみたい気持ちはずっとあった。
だが、その答えを知るのがどこか怖くて、あの夜以来、薔薇についての話はしていない。
メリッサが発したあの「呪い」という言葉は、私の心の奥底に、見えない棘のように刺さったままだ。
このまま真相を知らない方が幸せなのだ思う一方で、今確かめておかないと、後で何か取り返しのつかない事が起こる----そんな不吉な予感が、交互に私の心を揺さぶる。
卑怯で臆病な私が選んだのは、何もしないという結論だった----。




