本物の星空の下で
あまりの衝撃に、私は案内人に顔を覗き込まれるまで、一人立ち尽くしていたらしい。
「おめでとうございます。これで貴女様の巫女が決まりました」
「いや、あの……み、巫女っていうか、アレは巫女なんかじゃなくて……その……魔法使いとかそういう……」
そう呟いた途端、案内人は自分の唇に人差し指を当てた。
「たとえ十二王家の姫様であられても、滅多な事は仰らないように願います」
そうだ、魔法という言葉ですら、マキナに聞かれたら忠告とペナルティが課されるのだった。
たとえ子供の発した言葉であっても----。
「……でも、あのメリッサって子は、何だか他の子達とは違ってましたけど……」
そういえば、彼女の姉であるアマルテイアは、どうなったのだろう。
あの必死さと懸命さは、自分が巫女になりたいという欲求からではなく、妹を巫女にさせないがために、自分が巫女になろうとしていたように思えてならない。
「そもそも巫女って、何なんですか……? 巫女の仕事というのは、その、お飾りって言い方はアレですけど、惑星監督官に同行するだけの内容なんですよね?」
返事の代わりに、案内人は空を見上げた。
マキナの管理していない、宇宙と直接繋がっている、本物の星空----。
「巫女というのは、名誉な仕事なんですよね?」
「……ええ」
本物の星空は、星が落ちてきそうで、人工の空で育った私には綺麗というよりも、怖い。
本物が全て美しくて優しいとは限らないのだ。
「……でも、あの子の姉は、自分が巫女になりたくて必死になっていたようには見えませんでしたけど……」
食い下がる私に、案内人はしばらく黙っていた。
「あの二人は森で拾われた双子なのです」
言葉を選びながら、案内人は話始めた。
「姉のアマルテイアは乳で育てられたのですが、妹のメリッサは乳の代わりに、蜜で育てられました……だから、姉よりも少しだけ身体が弱くて、いつも姉の後ろに隠れるようにしていました……だからアマルテイアは、知らない惑星へ妹を一人で行かせるのが心配だったのでしょう……」
「……そうだったんですね」
一応納得したらしき返事を返したものの、咲かない蕾を何度も何度も擦り続けた姉の、絶望に満ちた顔が脳裏から離れない。
(惑星監督官付きの巫女……単なる惑星の住民への権威付け程度に考えていたけど、私が知らないい、何かもっと違う大きな役割があるのかもしれない……)
漠然とした疑惑のようなものを胸に残したまま、私は広場でメリッサを待った。




