姉と妹
「アマルテイア!」
案内人に名を呼ばれた少女は、もう一人の少女と寄り添うように立っていた。
二人とも似たような背格好だ。
そして、小さい。
(せいぜい七つか八つくらいにしか見えないけど、巫女って、こんな小さな子達までなれるものなの……?)
だが、アマルテイアと呼ばれた少女は、その小さな身体に他の少女達とは違った、悲壮な雰囲気を漂わせていた。
「お姉ちゃん、大丈夫……?」
「大丈夫、お姉ちゃんが、ちゃんと咲かせるから……貴女は心配しなくていいのよ……」
縋り付く妹に言い聞かせるようにして、アマルテイアは鉢の前に歩み出る。
細い指先が、震えている。
何処か思い詰めた手付きで、蕾を撫で始めた。
他の少女達よりもゆっくりと、祈るように。
一回。
二回。
三回。
----蕾は、固いままだ。
案内人が微かに首を振った。
だが、アマルテイアはまだ蕾を撫で続ける。
四回。
五回。
六回。
七回。
こういう時、私の立場としては、どうすればよいのか分からない。
止める事もできずにその必死な様子を見ているしかなかった。
暗闇の中、誰もが息を吞むようにして彼女を見詰めているのが分かる。
「アマルテイア! もういいのです! お止めなさい!」
とうとう案内人が叫んだ途端、彼女の被っていた頭巾が脱げて、長い黒髪が、はらりと零れた。
「やらせてください! きっとできます! 私が咲かせます……ッ!」
少女の目からは大粒の涙が、ぼたぼたと落ちていた。
八回。
九回。
だが、どんなに撫でても、蕾は、固く閉じたまま少しの変化もなかった。
「どうして……ッ!? どうして私じゃ咲いてくれないの……ッ!?」
とうとう、少女は悲痛な声を上げて、崩れるように屈み込んでしまった。
「私が咲かせなきゃ、私が! お姉ちゃんの私が……! 私が出来なきゃダメなのに……!!」
そんな彼女に抱きつくようにして、もう一人の少女は、自分のローブの袖で、流れる涙を拭ってやっている。
「泣かないでお姉ちゃん……私は一人でも、ちゃんとやれるから……ね……?」
寄り添う姉妹に声をかける者は、誰もいない。
小さくなった啜り泣きの声は、まだ聞こえ続けている。
時間だけが過ぎて行く----。
やがて我に返ったかのように、案内人が次の少女を呼んだ。
「……メリッサ!」
あくまで静かだが、少し強張った声で。
「……さあ、貴女の番ですよ」
妹が、立ち上がった。




