たったひとつの冴えたやりかた
フォルトナは『心』が強固であるという理由から、このまま『治療』が成功しなければ、規定通りに特殊な適正持ちとして『教化担当官』として育成される事が決定していた。
『教化担当官』とは、施設に収容された『心』を持つ子供から『心』を消す座学を主に行う専門職の事である。
自分が『心』を持っている分、『心』を持った子供の『治療』に対する抵抗心や恐怖、そして教化しやすいポイントが理解できるから----という理由らしい。
『あまりにも残酷ですよね……こんなの、『心』が無い人間にしか思い付かないシステムだと思いませんか?』
実験の合間、休憩室で、思い詰めた表情のフォルトナは、手元のカップを握ったまま私に伝えて来た。
育成期間は半年ほどだという。
その後試験に合格すれば、惑星機構の職員として厚生局の職員となり、『心』を持ちながらもほぼ普通の生活が可能となるらしい。
初めて会った時から、色んな話をして来たが、『心』のある人間が幸せに暮らせる世界にしたい、という私とフォルトナの望みは変わらない。
そんな彼女にとって、『教化担当官』とはあまりにも辛い仕事だ。
----だが、ある意味この状況は私にとっては僥倖とも呼べるものだった。
『教化担当官』になれば、同じ厚生局の管轄でもある、補佐官試験の受験資格を得る事ができる。
『教化担当官』に育成されるという事は、性格、学力、指導力が一定の水準にあるという事であり、推薦状があれば、上級職である補佐官の試験を受けられる。
新しく発見された惑星へ送られる監督官はまだ決まっていない。
『心』を持った私がもし監督官に決定すれば、補佐官が必要だ。
補佐官は一度の任務期間が短い割に、次の任務までの休養期間が長い。
これから惑星への派遣が決まったとして、私の担当をすぐ務められる補佐官が見つかるかは分からない。
何よりも、私は『心』を持っている。
通常の惑星監理官と違い、受けるストレスはかなり大きいはずであり、負担軽減のためにはむしろ『心』を持ち、良き話し相手となる優秀な補佐官を希望しても、何らおかしくはないはずだ。
『フォルトナ! 私がもし惑星監理官になったら、貴女に補佐官になって欲しいの!』
私の突然の提案に、フォルトナは目を見開いた。
私はそこで説明した。
まず『教化担当官』としての試験には合格してもらい、そこで改めて父に頼み、補佐官試験のための特別推薦状を出してもらうつもりである事、現状であればまず通るであろうから、そこでなんとか補佐官に合格して欲しい----。
今にして思えば所詮は十二王家の世間知らずの娘のわがままでしかなかったのだが、その時の私はそれが私にもフォルトナにも、最良の選択だと信じて疑わなかった。
『分かりましたわ……』
フォルトナはしばらくの沈黙の後でカップをテーブルに置いた。
『私、貴女の補佐官になります』




