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タワー
あれだけ部屋を見て回った割には、メリッサは自分の部屋が欲しいとは言い出さなかった。
その代わりという訳ではないのだろうが、
「ここが今日から私のラボね」
空き部屋の中心で、黒髪の少女は厳かに宣言した。
傍らにはトランクから出した装置で組み立てられた、少女の身の丈よりも高いタワーが聳えている。
タワーが漂わせている重々しさは巨大な年老いた獣じみていて、私は何とはなしに遠巻きに見守る格好になってしまう。
「私の許可なしには入ったらダメだからね?」
首元にリボンをあしらった白いブラウスに黒のノースリーブワンピースという出で立ちは、まだぬいぐるみを抱いていても違和感がない。
「……貴女、これ全部使えるの?」
「うーん、使えると思う」
アルファベットの書かれたボタンが並んだもの、ツルツルとしたガラスのような手触りの板が嵌った額のようなもの----私にはさっぱり分からない装置----。
全てメリッサが本を見ながら黙々と組み立て、コードを繋いだものだ。
でも、電気は----?
私の疑問に気付いたのか、メリッサは腕を組み、うんうんと一人頷いた。