満足
「ん……ッ、ぷはぁ……!」
どのくらい唇を塞がれていたのかは分からないが、とにかく長い時間としか言えなかった。
私は息ができないまま、少女の体重を両腕で支え、目を白黒させる事しか許されなかったのだから、頭など働くはずがない。
(……は、早く終わって……もう無理、さすがに無理……!)
思いが伝わった訳ではないのだろうが、
「ふぅ……ッ、ごちそうさま……ぁ……」
満足したのか、ようやくメリッサが唇を離してくれた。
心なしか、大きな漆黒の瞳が濡れたように光っていた。
「アンソニーの言う通りね、これで本当にお腹いっぱいになっちゃった……」
どんな風に少女に教えたのかは分からないが、少なくとも庭師の棟梁である司祭枢機卿は、私達二人でしかする事のないこの食事の方法を知っている。
「あれ、元気ないけど大丈夫……?」
「元気は……今吸われたから……」
毒草で補給したとはいえ、これだけ生気を吸われたら、ぐったりしない方がおかしいだろう。
(……まあ、どんな教え方をしたのかは聞かないほうが良さそうね……)
「ねぇアイリス……このごはんの食べ方、私好きよ」
「……そう?」
小さな舌先でぺろりと唇を拭う少女は、あくまで無邪気だ。
「とっても、美味しかった……」
少女は、ふふっと微笑んだ。
私の方はといえば、心臓の鼓動がまだ早いままだったが。




