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満足
「ん……ッ、ぷはぁ……!」
どのくらい唇を塞がれていたのかは分からない。
私は息ができないまま、少女の体重を両腕で支え、目を白黒させていた。
さすがにこれ以上は無理、という思いが伝わった訳ではないのだろうが、
「ふぅ……ッ、ごちそうさま……ぁ……」
満足したのか、ようやくメリッサが唇を離してくれる。
心なしか、漆黒の瞳が濡れたように光っていた。
「アンソニーの言う通りね、本当にお腹いっぱいになっちゃった……」
「……それは良かったわ」
あの男がどんな風に少女に教えたのかは分からないが、この私達の食事のやり方を知っているという事なのだ。
「ねぇ……このごはんの食べ方、私は好きよ」
小さな舌先でぺろりと唇を拭う少女は、あくまでも無邪気だ。
だが、私の方はといえば、心臓の鼓動がまだ早いままだった。