異端
魔女の告発理由は枚挙に暇がない。
村の誰よりも薬草を育てるのが上手い。
迷子になった羊をすぐに探し出せる。
他人には見えないモノが視える。
町の誰よりも鉱物に詳しい。
夜中に一人で森にいた。
異国の歌を知っている。
作物の出来が良い。
書物を読める。
きっかけは何でもいいのだ。
自分達と違うと思えば思うほど、魔女の虚像は作り上げられていく。
知恵や洞察力や身体能力といったものが少し優れていただけでも、一旦共同体の中で異質とされてしまえば、『人間』から『魔女』への転落はあっという間だった。
哀れな『魔女』達は名を記され、ある者は名を記される事さえされずに、拷問の果てに襤褸切れのように打ち捨てられた。
だが、彼女らは、ある意味ではまだ幸福であったのだ。
なぜなら人間として死ねなくとも、死ぬ事だけはできたのだから。
苦痛が続いたとはいえ、それは煉獄の責めであり、いつかは終わるものであったのだから。
苛烈な拷問の、さらに先に待つを味わう事は免れたのだから----。
ここから先は、本当の『魔女』の話だ。
地獄に墜とされ、灰になるその日まで涙も凍る氷の炎に焼かれ続ける者の話だ。
『異質』ではなく、救いようのない『異端』とされた私が語るべき物語だ----。