表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/381

魔女の墓場

 この地は、総本山となる教会堂が建てられる遥か以前からネクロポリスと呼ばれ、埋葬地として利用されてきた。

 私達の頭上にあるガラス張りの温室はその入口を隠すためにあり、階段を下れば蜘蛛の巣状に張り巡らされた地下道へと繋がっている。地下道の基礎は共同墓地の遺構であり、現在も無数の骨が横たわっているのだ。

 私の暮らす地下室も、長大な地下空間の一部を改築したものに過ぎない。

 そして、その地下空間は、魔女の墓場でもあった。


「それは……魔女を繋ぐための、鎖よ」

「繋ぐ……? どうしてそんな事するの?」


 壁の上部、少女の背丈では指先すら届かない場所に、台座に固定された太い金輪が、所在なさげにぶら下がっている。

 ベッドすらない殺風景な部屋で、それだけがやけに黒々とした影を伸ばしていた。

 ここは、牢だったのだ。


「魔女が逃げないように、この部屋に閉じ込めていたの」

「どうして?」


 私は答えあぐねる。


 私がここに連れて来られた時には、既に魔女の数は減り、脱走などはなかった。

 それでも魔女狩りの最盛期にはここには多くの魔女が連行され、押し込められていたらしい。


 「勝手に死なせないため、かな……?」


 魔女には二種類ある。

 死にたくないと願う魔女と、

 死にたいと願う魔女。


 脱走を試みた者は、早々に目的を達する事ができたのか、あるいは……。


 錆付いた金輪が、ゆらりと揺れたように見えた。 


「でも……魔女は簡単には死なないわ」


 死なない。

 いや、死ねないのだ。


 魔女は、死ねない----。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ