地下室
「もう起きてもいいんだよね?」
「……そ、そうね」
真面目な顔で律儀に尋ねられると、なんだかこちらの調子が狂ってしまう。
これが子供らしさなのか、それともこの子だからなのか、見当もつかない。
そもそもこのくらいの子供と最後に話したのはいつだったか----。
「ここの朝ごはんって、何時から?」
「……ごはんは、もうずっと食べてないわ」
べッドから抜け出た私の姿を見て、メリッサは目を丸くする。
「えっ、服もそのままなの……?ボロボロじゃん!?」
言われてみれば、服を最後に着替えたのはいつなのだろう。
最後の戦闘で失明し、この地下室に戻されて以来、黒い長袖のいわゆるワンピースを着たままだ。
「アイリスって、ここに……ずっと一人でいたの? 80年も?」
信じられない、という口調で少女は言い、部屋を見回す。
「そういえば、ここ、ベッドしかないね」
「他の部屋もあるわよ……この地下は広いから、奥には確か食堂も……」
私の言葉に、少女は顔をぱっと輝かせた。
「他の部屋も見たい!」
「まあ……いいけど……」
朝からこんな調子か、と観念して私は髪をかき上げる。
少しずつ思い出してきた。
これが他人と暮らすという事だ----。
どうやらあの庭師は昨晩私の平穏を持ち去ってしまったらしい。
私は気付かれないように、小さく溜息を吐いた。




