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地下室
「もう起きてもいいんだよね?」
一々尋ねてこられると、なんだかこちらの調子が狂ってしまう。
妙な律義さは子供らしくないようにも、いや、子供だからこそなのかもしれない。
そもそも子供と最後に話したのはいつだったか----。
「ここの朝ごはんって、何時から?」
「……もうずっとごはんは食べてないわ」
べッドから出た私の姿を見て、メリッサは目を丸くする。
「服も、そのままなの……?」
言われてみれば、服も最後に着替えたのはいつなのだろう。
最後の戦闘で失明し、ここに戻されて以来、このままの格好だ。
「ここに……ずっと一人でいたの?」
信じられない、という口調で少女は言い、部屋を見回す。
「そういえば、ここ、ベッドしかない」
「他の部屋もあるわよ……この地下は広いから奥には確か食堂も……」
私の言葉に、少女は顔をぱっと輝かせた。
「他の部屋も見たい!」
少しずつ思い出してきた。
これが他人と暮らすという事だ----。
私は気付かれないように、小さく溜息を吐いた。




