魔女花
『コードネームは私がアルファで、アイリスがオメガなの!』
『はぁ……』
実際問題として、今更それらしい呼び名が付いても、もう二人しかいないのにという感は否めない。
おまけにアルファだのオメガだのと、ヨハネの黙示録の一節を思い出しそうになるのも嬉しくないポイントだ。
(ま、はじまりの魔女と、なりそこない……いや、終わらせたい魔女に付けるには、妥当なコードネームではあるわね)
単なる備品の管理番号を焼き直ししただけではないのかという気はしないでもないが、拒否するほどのものでもないのでありがたく頂戴する事にしておく。
『ちなみにストライガとは、アフリカ、アジア、オーストラリアの熱帯および亜熱帯区域に分布する一年生の半寄生植物の総称であり、種数は40種以上とみられています』
カーラβが滔々と説明を始めた。
『植物体は明るい緑色の葉茎と小さく色鮮やかな花を持ちます。ピンクとか薄紫で可愛らしい花ですが、本属の数種はアフリカのサバンナ地域の穀物栽培に甚大な被害を及ぼしており、また、他の原産地や帰化したアメリカ大陸でも収穫量の減少を引き起こし問題化しています。地上部が現れた時には寄生活動を完了している恐ろしさを魔性に見立てて、ラテン名で魔女を意味する呼び名を付けられています……だそうですよ?』
『えぇ……それって要するに雑草だし、滅茶苦茶嫌われてるじゃない!?』
そこまでするかというくらいに気落ちした様子でメリッサが嘆く。
『もっと可愛いのが良かった……』
『そんな事だろうとは思ったわよ。あの嫌味男が私達魔女に普通に可愛い花の名前なんて付けてくれる訳がないじゃないの』
慰めながら、私の顔はそれでも僅かに綻んでいた。