表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
王太子に転生しましたが、何故か悪役令嬢に土下座をしました  作者: 奈香乃屋載叶(東都新宮)


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

11/17

第11話【近いうちは翌営業日】

【書記官 ジュゼッペ視点】


外務卿がいむきょう、お呼びでしょうか」


 この日の昼下がり、私は外務院がいむいんに呼び出された。

 どうしたのだろうか。


「モンペリエ王宮書記官おうきゅうしょきかん、突然ですまない。実は、外交文書がいこうぶんしょがルイッツホーフ公爵家宛こうしゃくけあてに送られてね」


 ルイッツホーフ家。

 我が王国でも有力な公爵家。

 その令嬢れいじょうであるユリアナは、先日まで王太子おうたいしであるレオポルド殿下でんか婚約者こんやくしゃだった。


「何か問題があったのでしょうか」


 王家から出された国内の公爵こうしゃく侯爵こうしゃく宛の外交文書は、外務院を通して出される。

 それ自体は問題ない。


「ああ。その外交文書は、レオポルド殿下でんかから公爵令嬢こうしゃくれいじょうのユリアナ嬢個人(・・)へ届けられていてね」


 婚約破棄した関係であるが、何故個人宛に外交文章が。

 確かに何か問題が起きている可能性がある。


「先程、ルイッツホーフ家使用人のサルチャク・ウール氏より、外交文書から私信ししんへの取り下げを要請してきた。回答は公爵家の規則きそくのっとって明朝みょうちょうまでにすると」


 外交文書を私信にしてほしい?

 どういうことなんだ。


「封筒は外交文書用だったし、王家の正式な印も押されていた。だから、そのまま送ったんだが」


 もしかして間違えたのだろうか。

 実物を見ていないので分からないが。


「侍女のレーナ・ニコシアが、封筒と印から判断して届けたらしい」


 変に質問しないよな。

 完璧に形が決まっているなら、信じるだろう。


「殿下に状況を確認して、こちらに伝えてほしい」


「分かりました」


 面倒めんどうなことになったな。

 だがやらないと。


(形式だけが先に走る。それが一番、厄介やっかいだ)


 とりあえず王宮へ戻って、文官ぶんかんのガスペリにこの事を伝えた。


「さっき外務院から照会しょうかいがあった」


「何があったんだ?」


 ガスペリはそう疑問に思っている。


「ルイッツホーフ家に外交文書が届いた。差出人は殿下で、外交文書用の封筒に王家の正式印せいしきいんもあった。ただ、ルイッツホーフ家側は明朝までに回答はするが、外交文書を私信扱いにしてほしいという内容だ」


「それは面倒な事だな」


 話を聞いて、そう感想を口にしていた。


「ちょっと殿下に訊いてきてくれるか?」


「はい、了解です」


 彼はそのまま行ってしまった。

 そしてしばらくして、ガスペリは戻ってきた。


「殿下からも私信扱いにしてほしいと。間違っていた模様です」


「ありがとう」


 私はまた外務院へ行った。

 報告をするために。


「私信扱いに訂正ていせいか、分かった。ボリス陛下へいか報告書ほうこくしょを書いてくれ」


「分かりました」


 外務卿は頷いて外務院ここでの話は終わった。


「殿下の”私信”は、時々国を揺らす」


 そう外務卿はつぶやきながら。

 とりあえず私は報告書を書き、陛下の執務室しつむしつへと届けていく。


「陛下、よろしいでしょうか」


 私は執務室にいた陛下に、今回の報告書を届けた。

 神妙しんみょう面持おももちで見続みつづける陛下。


「誰が、なぜ、これを許可した?」


 次に開いた言葉はそれだった。静かで、疑問ぎもんに思っているようだった。

 こっちに質問しているのと両方で。


形式上けいしきじょうは、王太子殿下ご自身じしん裁量さいりょうです」


 とりあえず、当たりさわりのない言葉を伝えた。


「中身は?」


「誰も読んでおりません」


「…………」


 陛下は何も答えなかった。

 読まれていない。それが、最悪だ。


「分かった。ご苦労だった。では、がってい」


「はい」


 私は一礼いちれいし、執務室を後にした。




【ユリアナ視点】


 この日の昼時。

 わたくしは昼食を取った後、侍女じじょのアレリアにれてもらった紅茶を飲んでいた。

 王宮へは行かなくなって、何となく落ち着いていたのもあったが。

 殿下でんかは、公務で迷われていないのか。それは気がかりだけど。失敗をしてしまわないのかというのだって。

 いえ、わたくしは殿下に捨てられた。

 ただそれを拾いに来ている。

 そんな方の心配なんて、必要ないのに。

 無いはずなのに。


「お嬢様、王宮からの書状です」


 使用人しようにんのサルチャクが少々慌てた様子で一枚の封筒を持ってきた。

 宛名はわたくし、差出人は殿下。

 手渡された瞬間、通常の私信とは違うのを感じた。

 封筒が違っている。

 わたくし宛に送るはずの、色と装丁。

 そして封蝋ふうろう


「王家の印、ですのね」


 正式なもの。

 それがはっきりとした、外交文書だって分かった。

 私信ではない。


「何故、今頃いまごろになって送るのかしら」


 婚約解消こんやくかいしょうの正式書類は既に届いている。

 なのにわたくし宛に何を送ろうというのか。

 そのために、わたくしは開けられなかった。


「誠意、なの?」


 予想できるとすれば、それしかない。

 昨日の行為も合わせて、殿下がしようとしているのは、わたくしへの謝罪。

 そう予想し、一拍いっぱく置いて、開けてみることにした。

 中に入っていた便箋びんせんには、殿下からの文章が書かれていた。


『ユリアナ様。

 私は婚約破棄にあたり、説明を放棄ほうきしました。

 あなたの時間・尊厳そんげん・信頼を損ねました。

 許しは求めません。

 次は”行動”で示します。

 面会の可否はあなたの判断に委ねます。

 可能であれば、近いうちにお返事をいただければ幸いです』


「やはりそうでしたのね」


 何故、外交文書にしたのだろうか。

 外交文書にすることで、わたくしから許しをるため?

 この封筒で王家の印を押せば、確実に許してもらえると。わたくしは許さざるを得ないと。

 そんなことをしなくていいのに。

 でも、間違えた可能性はあるのだろうか。

 内容は確実に私信だから。


「王家の印だけ押して、封筒だけ間違えた、のかしら」


 宛名がわたくし本人。

 むしろその可能性がある。


「……殿下は失敗してしまったのね」


 これが私信であるのなら、わたくしに送る封筒を誤ったという事。

 失敗するなんて、わたくしが注意した事なのに。

 届かなかったのかしら。

 こんな事で、殿下にはわたくしが必要だって思わせないで。

 まだ許せるわけがない。


「とりあえずサルチャク、これを外務院へ」


 わたくしはとりあえず私信扱いに変えてもらうように、依頼をする文書を書く。

 外交文書ではないのだから。

 後始末あとしまつをしないと、問題が大きくなる。


「後、回答は明朝までにすると伝えて」


かしこまりました」


 彼には外務院へ行ってもらうことに。

 明朝は、ルイッツホーフ公爵家こうしゃくけの事務規定で定められている事。

 『近いうち(・・・・)』と書かれている文書には、翌営業日で対応すると。

 これは、殿下が書いている。

 わたくしが期限を決めたものではないから。


「さて、返信をしませんと」


 文章で届けられたのならば、同じく文書で返さないと。

 それにわたくしが今向かえば、あの姿勢をして気持ちを押し切られるだろう。

 許してしまうかもしれない。

 だからこそ、わたくしは便箋を取り出して書いていく。

 長く、ではなく短く。

 感情を伝えないで。


『殿下。行動とは、まず”正しい封筒と宛先”を選ぶことです。そして王家の印でわたくしの人生に期限を付けないでください』


 王家の印を押す方と、わたくしの人生を語ることは出来ないから。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ