火照る
炎に包まれたままゆっくり立ち上がる。ふらつきながらもようやくその重い体を起こした。
腕さえ動けばなんとかなる。そんな甘い考えと共に2人の間にある確かな実力の差に倉瀬は追い込まれていた。
ほかの誰もたどり着けない頂きに立ってみたい。小さな世界でそう思った。その小さな世界で何度も願った、外の世界を観てみたい。ただ、その勇気がない。ここでなら自分は不自由なく生きていける、満足している。言い訳だった。本当は怖いだけなのに、本当は退屈しているはずなのに。負けを知らない人間は強くなれないなんてよく言ったものだ。自分は天才なんかじゃない。自分は平凡以下だ。現に今、目の前に自分ではどうにもならないような相手がいる。勝てないと分かっている。頭の中いっぱいに溢れ出た考え、「一矢報いたい」。
「狙うならば空中。誘い出すしかない。」まだ戦えるぞとレイヴンを睨みつける。それに応えるようにレイヴンも構えを作る。「来い。」そう言わんばかりにクライスクリームは両手を広げて低く構える。互いに傷を負った機体。次の一瞬で勝負が決まるのだと皆が実感していた。
しばらくの沈黙のあと、先に動いたのはレイヴンだった。一直線に走り距離を詰める。それに応えるようにクライスクリームも両腕をめいいっぱいに使ってレイヴンを払おうとする。しかしレイヴンはそれを飛び越えて躱す。クライスクリームは一歩二歩と後退りする。
クライスクリームはレイヴンが大鎌を振るうたびにそれを必死に避けるも確実に消耗しつつある。一方は焦りから、もう一方は余裕から「決めるなら今しかない」、お互いにそう感じていた。
クライスクリームは伸び切った腕をもとに戻し、壁際に構える。
レイヴンは何を思ったか正面突破を狙う。直感的なひらめきがそこにはあった。
レイヴンが飛び上がって鎌を振り上げる。待っていましたとクライスクリームは空中に浮かんだレイヴンめがけて腕を伸ばす。その腕が再び伸び切ったとき、掴んでいたのは鎌だけだった。掴まれる直前、レイヴンは大鎌を上方へ投げ出した。慣性によってわずかながらに体の位置が下へずれ、クライスクリームの頭部めがけて加速した。
レイヴンの細い脚部は分厚く鈍重な機体にめり込んでいた。その攻撃はコアにまで到達した。
完全破壊により試合終了である。
出場者の殆どが2人の選手によりリタイアを余儀なくされ、殆どの機体が大破してこの大会は幕を下ろした。




