戦鎚の悪魔
特訓を終えたあとの休憩時間、美娘は光流に呼ばれて地下に向かう
自分より何回りも大きい、ここまでの差がありながら不思議と力が湧いてくる。
「足元!足元狙って、体制崩せば何とかなる!」ノイズが走る無線の音声が耳元で、頭のなかで響く。
鎌のリーチというアドバンテージなんか関係ないと言わんばかりの相手は私のことを舐め腐っている。「さっさとのし上がるのよ、アンタなんかに苦戦してられない!」
黒い金属の塊は静かに崩れ落ちた。
「美娘、こっち来て。」エレベーターの扉を閉めた。「待って、なんで閉めるの!」「嫌な予感がするから。」厚い扉越しに必死に訴え掛けて来るので仕方なく空けてやった。
「とにかくついてきて。」そう言う光流の顔は油で汚れていた。
「…レイヴン?何か色々違わない?」「改修したからね。」自慢げに仁王立ちする光流の横顔は笑っていた。「出力の調整、油圧機器の入れ替え、足元の修理&補強。内部はざっくりこんなとこ。装甲パーツは一部別機体のを流用して、強度を保つ範囲で肉抜きしたから重量に差はないよ。」
自信満々に改修した箇所を細かく説明し始めた。
全ての説明が終わる頃美娘の足は痺れきっていた。
「それで、やるんでしょ?試運転。」光流の顔を見ると「随分と乗り気じゃない?」と笑ってきた。
「試合は週に2回、一カ月かけて10勝する。タイマンだから練習次第だけど。」何故か座学が始まった。「それでそれで1つ質問をする。」「何よ。」「レイヴンは今、できるだけの改造を施して最善の状態にしてある。使ってみて分かったとは思うけど…」「あり物で取り繕ったツギハギね。」「お金がないんだよぉ…会社の経費使うわけにもいかないしさぁ…」そう言って光流が泣きついてきた「はいはい稼げば良いんでしょ?やるわよ。」光流を引き剥がして一息ついたあとシェリーが戻ってきた。「みっつー、出力制御とチューニングだけどさ、今のコアじゃあこれ以上上がらないよ?スピード。」差し出されたタブレットの画面いっぱいに計算式がびっしり書かれていた。「やっぱり会社の経費を…」「バカ、今会社もカツカツでしょうが。」シェリーが光流の頭をコツンと叩いた
アマチュア上がりの選手たちがプロとして1人前になる条件、その1つが個人戦10勝。
そして蒼野美娘は現在0勝1敗。
初陣から2週間後定期的に行われる公式戦リーグカップ。総当たり戦のため試合数を稼ぎやすい。
「美娘、わかってるとは思うけど相手は皆経験者なんだ、油断したらすぐにやられる。」「お節介ね。」「念には念をってやつさ。」
ここから全てが始まる。
光流はまるで焦っているかのように美娘を試合に出す。光流が目指す場所は果たして…




