8.今日はパイを焼きましょう
帰ってくると、私は調理を始める。
「さてと。最初に取りかかるのは、生地かなぁ」
バターを小さく刻みまして、それから小麦粉と塩をボウルにいれて、刻んだバターを加えていく。
カード、つまり小さなヘラを使って、そぼろ状になるまでかき混ぜたら、中央にちょっとくぼみを作る。
卵をしっかり溶いて、くぼみに入れる。それからぐいぐいとカードで切るように混ぜる。
ここはこねくりまわさないようにするのがポイント。
それからしばらく休ませて、生地を安定させる、と。
「さてさて。休ませている間に、こんどはグミの実をジャムにしましょう。ぐつぐつぐつぐつお砂糖と共に煮込みまして」
グミの実をお砂糖と共に煮込んでいく。
砂糖はかなりの贅沢品だ。とはいえ、私は魔法で出すことができるからいくらでも使うことができる。
もっとも今日は料理とあわせるため、砂糖は控えめ。グミの実の自然な甘さを活かしましょう。
あと今日のジャムは料理に使うから、使いやすいようにしっかりと濃厚に煮込んでいく。保存用にもいいしね。
グミの実が完全に崩れてしまって、形がなくなるまで煮込んでいく。
「うん。こんな感じかな。このままヨーグルトに入れても美味しそう」
完成したジャムは熱湯で煮沸しておいた瓶に入れていく。こうしておくことで長持ちさせることができる。
「そろそろ生地も大丈夫かな。じゃあ生地も取り出しまして」
台の上に打ち粉をひいて、生地を平たくまあるく伸ばしていく。
「こんなものかな。次は具材の準備をしなくちゃね」
まずはたまねぎを切って準備をしておく。
それから森で集めた木の実をフライパンで炒り始める。
少し香ばしい匂いが立ち始めたら、いったん木の実を取り出しまして。
次は切ったたまねぎを炒めます。
じゅうじゅうと音を立てて飴色になるまでしっかり炒めたら、こんどは採取してきたきのこの出番。
水分がとぶまで、じっくり炒める。
うん。きのこからも深い香りが漂ってくる。なかなかいいできばえ。
味付けに塩をぱらりの、胡椒をぱらりの。いくつか香草も加えて、いい感じ。
それからグミジャムを少量加える。
このジャムが味のポイント。甘みが全体を引き立ててくれる。
火を止めましたら、チーズを少しだけ加えます。余熱でじわじわ、チーズがとろけていく。このままでも美味しそう。
それから準備しておいた生地の真ん中にのせまして。
半分に折ると、まるで半月みたいな形に変わる。
端をフォークでしっかり押さえて、中身が飛び出ないようにしなくちゃね。
残った卵を少しだけ表面に塗ったら、最後はオーブンに入れてしばし待つ。
二十分ほど経ちますと、焼けた生地の香ばしい匂いが部屋中に広がってくる。
それからさらに数分待てば、溶けたチーズの香りの中に甘酸っぱいグミジャムの香りがブレンドされて。ああ、もう待ちきれない。取り出して食べちゃいたい。
でもまだもう少しがまんがまん。
表面が綺麗なきつね色になるまで待ちましょう。
うん、そろそろいい感じ。
「完成。森の実とチーズの包み焼きパイ!」
今日も綺麗に焼き上がりました。
じゃあフェルくんとルナも呼びましょう。
「別にボクは食べないけどね」
いつの間にか足下にいたルナが、あくびと共に答えていた。
「たまには一緒に食べてくれてもいいんだよ」
「猫が人間と同じものを食べているのは変だろ。フェルに変に気が付かれるようなことはしたくないよ」
ルナはすぐにそっぽを向いてしまう。
「そっかぁ。まぁ、いいや。じゃあフェルくんを呼んで、ごはんにしましょう」
私はどこか浮かれた気分でフェルくんの部屋へと歩く。
とんとんと一応ノックして、それからフェルくんを呼ぶ。
「夕飯ができたよ。一緒に食べましょう」
『あ、うん。いまいく』
扉越しにフェルくんの声が響いて、それからすぐに扉が開いた。




