7.何が採れるかな
フェルくんはまだ左手に痛みがあるみたいだったので、休んでもらうことにする。
とはいえ打ち身すり傷のようだから、大事はない。私の薬も塗っているので、数日すれば治るだろう。
もっとも本当は私の治癒の魔法を使えば、もっと早く治すことができる。
でもさすがに魔法を使えば魔女だということがばれてしまうだろう。
魔女でなくても多少の魔法が使える人間というのは存在する。
だけど治癒の魔法は一部の神官のみが使える魔法で、それもごく少数に限られる。さすがにそんな魔法の使い手がこんなところにいたなら、すぐに魔女だと気が付く。
なのでフェルくんには可哀想だけど、しばらくは痛みを感じてもらうしかない。
「あの。僕にも何か手伝えることは」
ただ当のフェルくんは、何か気にしているようで、せめて家の手伝いをしようとしてくれていた。
たぶん真面目で良い子なのだろう。
「いいよ。今日のところはけが人は休んでいて。でもたぶん薬がきいてくるだろうから、明日には何か手伝ってもらおうかな」
にこやかに笑いかけると、フェルくんは申し訳なさそうにしゅんとして小さくなっていた。
別に気にしなくてもいいのにな。
「じゃ、私はちょっと夕飯の準備してくるね。といっても、まずは森で採集なんだけど」
「そんな。一人じゃあぶないよ」
「その危ない森に踏み込んで、一人でさまよってきた子はどこの誰かしら」
「え、えっと。それは」
少し顔を背けてごまかしている。
うん。小さくなって可愛い。
「大丈夫。私はずっとこの辺に住んでいるからね。危ない場所にはいかないよ」
私の言葉に納得したのか、フェルくんはうなずく。
実際入り口周辺はほとんど魔物もいないし危なくはない。
まぁ、仮に魔物が出てきたとしても、私に襲いかかってくるような命知らずの魔物はいないだろうけど。
人間と違って魔物をふくめた獣は、魔力には敏感だ。魔物の中には魔法を使う奴もいるから、魔力がどれだけ危険なものかは身に染みている。だから私に襲いかかるようなおまぬけな魔物はいないし、いたとしても返り討ちにするだけ。
だから私にとっては嘆きの森は危険な場所ではない。
何が食べられるもので、何が食べられないものかも私は熟知しているから、そういう意味でも危険は存在していない。
「じゃあ行ってくるね。すぐ戻ってくるから」
私の言葉に、それでも心配そうにうかがっていた。
手をふってウインクしてみせる。
それからすぐに森の方へと向かっていく。
「いまならグミの実がたくさん採れるかな。ジャムにするといいかもしれない」
この辺でとれそうな木の実やきのこを想像してみる。
お肉もちょっと食べたいけど、野ウサギとか捕まえるのは準備をしていないとやや面倒だ。
何でも魔法で片付けてしまってもいいのだけど、いちおうあまり魔力を使いすぎるのもよくはない。魔法で出すのは、街や村までいかないと手にいれられないものだけに絞り込もう。
それに採集したものの方が美味しいしね。
魔法で出したものは、なんか味が画一的でつまらない。
牛乳やバターとかを調味料的に使うのであれば、それでもいいのだけど、材料の中には多少はアクセントも欲しいものだ。
「さてさて、何が採れるかな」
私は想いを馳せながら、森の中へと向かっていく。
やっぱりごはんのことを考えている時間が、一番楽しいとは思う。




