20.リス達とのおしゃべり
辺りをフェルくんと二人で散策していく。
おさんぽは魔女の日課だ。このあたりで何か異変が起きていないか調べたり。何かこの辺にすむみんなに困ったことはないか訊ねてまわったり。いろいろとパトロールをするのが、魔女の役目だ。
いや役目といっても別にしなくてもいいんだけど、この辺で平和に暮らしていくためにはした方が良い。そんな感じ。
ついでにいろいろ食材も確保したり、薬の材料を探したりと、必要にかられておこなうものでもある。
柳の枝を編み込んだバスケットを手にして、ゆっくりと歩いて回る。
このバスケットも長年つかってきたからか、最初は綺麗な飴色だったものが、かなり深い色合いに変わってしまっている。
これはこれで素敵だと思うけど、最初の頃の色合いも好きだったからちょっと残念。
でも丈夫で長持ちするから重宝している。
頭上からはいくつも光が差し込んでくる。
世界樹の枝の間から差し込む木漏れ日だ。
だけど昔とはどこか違うくすんだ光に、何か世界が変わりつつあることを認めずにはいられなかった。
まぁでもいずれにしても私は毎日身の回りのことだけを考えるだけだ。
魔女のおさんぽは必ずコースが決まっているわけではないけれど、だいたい決まった場所を歩いていく。日によって多少違うこともあるけれど、おおむね同じ場所に同じ生き物がいる。
「あ、リスさんだ」
私が声を出して指さした先、倒れた木の上にリスが三匹ほど座っていた。
『ステラは今日も元気そうだね』
『私はお腹空いた』
『さっきドングリ食べたじゃん』
三匹がわいわい動物の言葉で話してくる。
『みんなは最近はどうですか?』
念話で話しかけると、三匹はおのおの好き勝手に話し始める。
『どうもこうもないよ。最近はすっかり景気悪いね』
『そうね。フランクの言うとおり、木の実の数が減ってきている』
『人間たちには嘆きの森なんて呼ばれているけど、僕たちにとっては恵みの森。豊かな実りがあるはずなのに』
三匹はおのおのわいのわいの話し続ける。
やっぱり世界樹の力がつきようとしているくらいだから、この森もあまり良くはないみたいだ。
『まぁ、食べるのに困るほどではないけどな』
『私はお腹空いた』
『君は食い過ぎ。さっきほっぺにため込んでいたぶんだって、もう全部食べてるじゃん』
実際に私がちょっと森を散策したくらいでも、けっこういろいろなものが採集できる。
だけど以前はもっともっとたくさん実っていたと思う。
『何が悪いのかね』
『フランクがいっぱい集めすぎたんじゃ』
『それは君の話だろ、リーリエ』
彼ら三匹はエドモンド、リーリエ、フランクって名前で、いつも一緒にいる仲良しだ。
『そっかぁ。リスの世界も大変だねぇ』
私はうなずくと、リスたちはまたもや一斉に話し始める。
『ステラがなんとかできないの』
『無茶いわないの。魔女だってできないこともあるでしょ』
『でもステラの魔力はむちゃくちゃじゃん。これならなんかできそうだし』
リスにお願いされたけれど、さすがにこれは何とかできる話でもない。
『ん。まぁ、考えとくけどさすがにちょっと難しいかなぁ』
『まぁ、そうだよな』
『そうそう。ステラだって無理なものは無理』
『うーん。そうかなぁ。まぁ、いいけど』
三匹がいろいろと告げていたけれど、世界の荒廃は私には何ともしがたい。
とりあえずきくだけきいておこう。
『そういえばなんで人間の子供なんてつれているの』
『そうそう。びっくりした』
『まぁ、ステラの使い魔なんじゃない』
『違うよ。お客様だよ』
リスの言葉を否定すると、リスたちがフェルくんの顔をじっと見つめていた。
『ま、僕たちはいいけど、他の奴らはどうかな』
『そうね。人間嫌いも多いから、愛想つかされちゃうかも』
『あぶないね。気をつけて』
リスたちの言葉に私は否定も肯定もしない。
確かに森の動物たちや妖精の中には人間嫌いの子もいる。
彼らは今日はでてこないかもしれない。
少し考えてみるが、いまさらもうどうしようもない。とりあえずお礼はいっておこう。
『そうだね。ありがとう』
つぶやくようにつげて、それから軽く手をふってみる。
「じゃあ、今日はこのへんで。リスさんまたねー!」
私の言葉にリスたちがそれぞれ一斉に去って行く。
「リスと仲良いんだね」
それからすぐにフェルくんが話しかけてくる。
「まぁ、毎日ここで会っているからね。慣れてるんだと思う」
「何か話していたみたいだったけど」
「リスの鳴き声って、不思議な感じだよね。キュッキュッキュッキュって感じで」
リスたちは思い思い動物語で話していた。私からは念話で送れるけれど、リスたちは念話は使えない。だからリス語で話していたとは思う。
でもさすがに会話していたなんて認める訳にはいかない。人間にはリス語はわからないのだから。だから否定も肯定もせずに、違う話を始めてみる。
けどフェルくんは大して興味もなかったのか、つっこんで探ってきたりはしなかった。




