14.ちゃんとごまかせたかな?
「はい。フラットパンケーキ目玉焼き添えと今日のサラダだよ」
私が運んできた料理に、またフェルくんは目を大きく開いた。
「生野菜のサラダとかすごい。やっぱりステラは貴族とかなの?」
「違うよ。たまたまいいものがあっただけ」
「でも、生野菜とか、保存するのも大変だし」
「あー、それはまほ……いたっ!?」
またルナがかみついてくる。
「ルナ……何するの。いたいよ」
私が抗議の視線を送ると、ルナの方が目尻をつり上げて私をにらみつけていた。
『何するのじゃないよ。自分から正体をばらそうとするなんて、脳みそが腐っているのか、キミは』
『あ、そうでした』
念話で伝えてくるルナに、私は慌てて言葉を飲み込む。
私が魔女で魔法が使えることは秘密でした。あぶないあぶない。
ちらりと横目で様子をみる。フェルくんは、不思議そうな顔をして首をかしげている。
フェルくんにはばれてないよね。たぶん。
「えっと裏の畑で育てているんだよ。たまたま収穫したばかりだったの」
とりあえずごまかしてみるけど、うそはついてない。収穫してから魔法の冷蔵庫に入れているから長持ちするのでふだんから作ることができる。だけど今回は本当に収穫してからあまり時間は経っていない。
「そうなんだ。ステラはなんでも一人でこなしていてすごいね」
「まぁ、一人が長いからね。何でもできないと」
これは本当のことだった。
もう私はずっと一人で暮らしている。ステラとして生を受けてからも、その前も。
精霊や使い魔の力を借りることはあるけれど、掃除も洗濯も料理も。畑仕事もぜんぶ一人。
それが私の日常だったから。
「そうなんだ。こんなところで一人だなんて大変じゃない?」
「そうでもないよ。それにこの辺は安全だからね」
これも嘘ではなかった。
嘆きの森の外で、この辺は魔物も少ないし、蛇とかの危険な動物もほとんどいない。もっともその辺は私の魔力を恐れて、向こうから近づいてこないのだけど。
そして何よりここまでやってくる魔女討伐隊なんてほとんどいない。よっぽど自分の実力に自信がなければ、わざわざ危険を冒してまで、こんなところまでくる人は少ない。そんなに簡単にやられる私でもないけど、それでも私にとっては安全な場所だ。
まぁ目の前に宵闇の魔女を殺しにきた男の子がいるんだけど。
何となくおかしくなって、思わず口元に笑みがこぼれる。
「どうしたの?」
「ううん。それより温かい内に食べちゃおう」
「あ、うん。そうだね」
私の言葉にフェルくんは慌ててうなずく。
少しはごまかせたかな。
ま、そんなことよりも、ちゃんと朝ごはんを食べないとね。
まずはサラダから。
「しゃきしゃきしてて、瑞々しくて。野菜って、こんなに美味しかったんだ」
フェルくんもサラダに感動しているようだった。フォークに刺した野菜をしげしげと見つめている。
あまり街とかだと生野菜はなかなか食べられるものではないみたい。それなら新鮮な野菜の美味しさなんて味わったことないよね。
「なんかこのかかってるソースが、すっごくクルミの味がして、むちゃくちゃ美味しいよ」
フェルくんは今日も驚きを隠せないようだった。
ドレッシングにクルミ油を使っているから、クルミの風味が広がったのだと思う。
満足してもらえているようで、私も嬉しい。
「じゃあ、パンケーキもたべてね」
森の魔女のパンケーキあらためフラットパンケーキは、まずはグミジャムとメープルシロップでいただきましょう。
うん。これも美味しい。
「ステラ。これもむちゃくちゃ美味しい。舌がとろけるみたい。こんなパンケーキ食べたことない」
フェルくんはかなり驚いているようだった。パンケーキを口にはこんだまま手が止まっている。
小麦と卵の味わいだけど、卵は少し珍しいのかもしれない。あとはジャムを加えてあるのも良かったのかも。




