【119】一方その頃
エルフの里跡地で激戦が繰り広げられている中……街で過ごしている金華達の方でも問題が起こっていた。
「ちょっと!どう言う事よ!!」
「あーえっとだな……」
ドーンに強い口調で詰め寄る黒蓮とそれに便乗する金華。そして素っ裸のままでそんなやり取りをしている三人を目の前にして目のやり場に困った様子で顔を真っ赤にしてワタワタしているカコの姿があった。
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「何でそんな危険な事やってるて教えてくれ無かったのよ!」
カコさんが唐突にこの場に転移して来たことによって、二人に黙ってルドさんの依頼を受けて…とっても危険な目にあっている事がバレてしまった。
「教えたら…一緒に行くって言っただろう?」
「「当たり前よ」だよ!」
金華が食い気味に頷きそう言った。危険があると聞いて、それでも即答で一緒に行くと二人が言ってくれて嬉しい……が、だからダメなんだ。
「だから言わなかった。正直、今の二人の強さじゃ着いてきていたとしても足手まといになるだけだ……カコさんみたいに」
そう言ってチラリとカコさんの方に視線を向けると、カコさんもその場面を思い返して申し訳なさそうな表情をうかべていた。
「薄々分かってはいたけれど、私達ってもうそんなに実力差があるのね……」
「で、でもさ!私もお姉ちゃんもサポートスキルを持っているし少しぐらい役に立てると思うよ!」
金華の言う通り確かに少しは役に立つだろう…けどそれは。
「俺にお前達を見殺しにしろと?」
「「っ!」」
そう言ってドーンが浮かべる表情はとても悲痛な物で…金華達はここでようやくどれだけの戦闘が行われているのかを察したようだ、そして自分達が思っていた以上にドーンに大切に思われていたらしい事も。
何処か気恥しそうに視線をさ迷わせる二人を優しく抱きしめる。互いに全裸のままなので、そんな事をすれば当然二人の柔らかな感触に襲われるが…この状況で盛るような事はしない。
「だからここで待っていてくれ、必ず勝って帰ってくるから。」
ーーーがやがやがや
ドーンがそう言った直後、先程まで驚く程に静かだったはずの外が俄に騒がしくなり始めた。
カコさんが慌てた様子で、へやの窓を開けて外を見た。するとそこに市場でも開かれていたのだろうか?とかなり多くの人達が口をポカンと開けて上を見上げいた。
空を見上げて固まってしまったカコをみて、外で何が起きているのかを察した黒蓮は、ドーンに言った。
「ダンジョンを呼んだのね?」
「ああ、るしさんも乗っている…白さんはいない」
「そう…そうだわ!ダンジョンの中からなら私、ドーンの足手まといにならずにサポートと出来るんじゃないかしら?」
いい作戦だと思ったのか、自信満々に言った黒蓮、だけど残念ながらそれは出来ない。
「相手がそれなりの相手ならそれでいいんだが、今回の相手は並じゃないだ。それにあのダンジョン今はるしさんが召喚した配下で埋め尽くされているし……今回の戦いで使い潰すつもりだ、そんなところに二人を載せる訳には行かない」
★
ここは上空数十キロ、時折やってくる雲や飛行型の魔物を蹴散らしながら凄まじい速度と転移を用いたお陰でもあって、目的地はもうすぐそこだ。
「Heyドーン、目的地まで後何キロ?」
「HeySiriみたいに呼ばないでください、あとコアの上に飛び乗らない。……目的地までは二三kmだ、それなりに高度は上げてあるから目的地が見えてもおかしくないと思う。」
「ほほぉ!なるほど、それじゃ早速……【エンジェルアイ】……これは、むむむむむむむむむ………ま、まさか!!」
聞き覚えのないスキル名を唱えながら、核のフチから身を乗り出してるしさんは下を除き込んで、うなり始めた。下を見るなら柵が付いている艦橋のほうからいいと思うんだけど。
「えっと、なにか見つけましたか?かるしさん。」
「……あぁどうやらドーンから聞いていたニクの儀式が…発動しているように見える、しかもこれは…『生贄の儀式』?」
「『生贄の儀式』って確か、生贄から効率良く経験値を吸い上げて発動者のものにする儀式ですよね?」
「そうだその儀式が………どうやら今終わったようだ。ドーン、向こうの状況は?」
「まだギリギリ生きてた古代聖浄竜にトドメを刺されて、ルドさんも変な攻撃で少し前にやられてしまった。」
「変な攻撃ぃ?……あぁ目を使ったのか。」
ドーンの物言いにるしは首を傾げたが、直ぐに思い当たる物があったのか得心言ったように頷く。
「心当たりがあるのか?」
「仲間のスキルだぞ?リーダーである俺が把握していない分けないだろう。おそらく【禁忌の魔眼】だろう。効果は次に発動した、スキル、魔法の全てのコストの踏み倒すっていうシンプルなものなんだが、それ故に凶悪だ。リキャストに一時間はかかるからしばらくあんな無法な事は出来ないはずだ。」
「それは良かった、そんな無法なスキルを連打されたらどうしようもないからな。それで、作戦は決まったのか?」
「もちろんだ!まず、天使達に聖域化を行わせて魔法陣の効力を下げさせて、トラップを無効化させる。その後に俺が突っ込んでニクと戦って倒す。その間にドーンはルドの蘇生と〈対価の天秤〉の回収をやってもらう。」
「なるほど……まぁいいんじゃないか?」
「……なんだ?おれの考えた作戦に文句があるのか?」
そういいながら自分のコアを脅すようにコンコンと軽く叩くるし。
今のるしのレベルが、どれくらいのかは知らないけれど、迷宮の核はそこまで頑丈じゃないから普通に壊されそうでちょっと怖い、もちろん今までの付き合いの中でるしがそんな突拍子もない行動をするようなタイプでは無い事は分かっているが……心臓を他人に握られているようなものといえば怖さが分かってくれるだろうか?
「も、もちろん作戦自体に不満があるわけじゃありません。」
「ほうほう、では何が不満ナノカナ?」
「不満だなんてんでも無い!ただ、るしさんが足止めを食らったり、ニクさんが複数同時に相手取るつもりで攻撃をし始めたらどうしましょう?」
「あーそれはな……」
サッと視線を逸らしたるしは申し訳なさそうに頭をポリポリかいた後言った。
「もしんな事になったら……聖域を維持する天使を守るのも、ニクのヘイトを俺に集中させるのもお前がやるんだドーン」
「えぇぇ…」
「まぁあいつは俺が大っ嫌いだからな、撃破を優先しないなんてありえないし、そんな事には十中八九ならないだろうから安心していいぞ。」
大きな胸を張って自信満々にそう言うるしさんに、苦言を呈することも出来ず、ただニクの元へ向かうしかなかった。




