第28話 マッドスパイダー
最初に見たのは足だった。
上空を凄い早さで移動する毛の生えた節だった足。
そして巨大な蜘蛛の体……つまり魔王が言っていたマッドスパイダーだろう。
マッドスパイダーは小さな獣をくわえている。
それから2mを越える大きさの白い狼の群れが地面いっぱいに現れた。
その神々しい姿はフェンリルに違いない。
私とアルバートはフェンリルに囲まれ、数匹がこちらを凝視している状況だ。
アルバートが私を背にかばい、剣を構えて静止している。
「魔王が攻撃するなと言ってる」
それを聞いて私は足の力が抜けて、その場で座りこんだ。
フェンリルは一匹くらいなら闘ってみたい魔物だが、群れを相手に闘おうとは流石に思えない。
アルバートは魔王と友好契約しているから念話で話しかけられたのだろう……。
フェンリルは私たちをしばらく眺めた後、マッドスパイダーの方へ駆け登って行った。
アルバートは剣を収めた。
フェンリルの群れは次々とマッドスパイダーに突っ込んでいくが、マッドスパイダーは糸を張って上空を移動しているのだから全ての攻撃が糸に吸収されてマッドスパイダーにはダメージが通っていないようだ。
しかもマッドスパイダーがくわえているのはフェンリルの子どもに違いない。
かなりフェンリルに劣勢な状態だ。
魔王はもちろんフェンリルの味方なので、魔法でマッドスパイダーの周辺の糸を焼きつくす。
マッドスパイダーの位置が下がってくるのを見計らってフェンリルが数匹マッドスパイダーの足に食らいついた。
だがその攻撃もマッドスパイダーの固い体にはダメージを与えた様に見えない。
フェンリルの群れの中に一際大きな個体がいる。
周りに比べると毛がふわりと金色に光ってみえ、いっそう神々しい。
そのフェンリルが遠吠えで合図すると、フェンリルの群れがマッドスパイダーから距離を取る。
金色がかったフェンリルは魔法が使えるらしい。
風魔法でマッドスパイダーの目の辺りを何度か攻撃をして切り割く。
マッドスパイダーは思わず、くわえていたフェンリルを落とした。
マッドスパイダーが糸を吐いてくわえていたフェンリルを確保しようとする。
素早くユリウスがフェンリルの子をキャッチして、糸をかわしてこちらに飛んでくる。
それを確認して魔王が水魔法を放つ。
さらにそのままマッドスパイダーを氷漬けにする。
マッドスパイダーはうごめいたが、氷ついた体は動かない。
ユリウスはアルバートにフェンリルの子を手渡すと、また魔王の側に戻って行った。
あとはフェンリルが群れでマッドスパイダーをタコ殴りにしている。
魔王とフェンリルのリーダーはそれを手を出さず見ている。
アルバートの腕の中の毛玉がわふっと鳴いた。
アルバートが怪我を確認しながら毛を撫でている。
フェンリルの子には成体の様な神々しさはなく、仔犬のようだ。
お目目がクリクリで思わずもふもふしたくなる可愛さだ。
アルバートが無限にもふっている……。
◇ ◇ ◇
蜘蛛は獲物をくわえて移動しないかもしれない……魔物だから厳密には蜘蛛と生態が違うということにしておきます。後で気がついたすいません。




