第26話 荷物
魔王とユリウスとアルバートと私、4人でご飯を食べているのが何だか不思議だった。
夕飯を食べて片付けて、そこでテントが二つな事に気がついた。
「見張りはどうするの?」
私はアルバートを振り返る。
「魔王が結界を張ってくれるらしい」
「俺は特に毎日眠る必要もない。だから特にテントも必要ない」
魔王ってありがたいな……。
「魔王ありがとう。でも旅の間は疲れるだろうから休息もとってね」
魔王は頷いた。
今日は初日だからと早めに眠りにつくことになった。
アルバートと私で一つのテントらしい。
横になるとぎっちりになる広さだ。
「スカーレットは魔王が好きなのか?」
最近はさすがに私もアルバートが割りと本気で私との事を考えている事を理解し始めている。
年齢的にもそろそろ後がなく、他に選択肢となる女性もいないのだろう。
「ずるいことを言うと私は魔王もアルバートも同じくらい好きで、多分どちらもまだ恋ではないんだと思うわ」
アルバートはむくりと起き上がり、私を覗き込んだ。
「どっちでもいいのなら、俺を選んで欲しい」
私はアルバートのブルーの目を見返す。
「もしかしたらレンセントには戻って来れなくなるかもしれない。魔王城に縛られている魔王には会えなくなるかもしれない」
アルバートは私を思って言ってくれたのだろう。
私はそうね。と答えた。
アルバートは気だるげにもう一度隣に横になった。
「ハンスの団服を借りに行った時に、エリーゼがスカーレットの心配をしていた」
私は最愛の妹の顔を思い浮かべて切なくなった。
「エリーゼは男爵家でうまくやれていた?」
「あそこの家はあまり貴族らしくない。だから貴族的な役割を求められない。窮屈な思いをすることがないと言っていた。幸せそうだったよ」
エリーゼはエリーゼでロッシーニの家に思う所があったに違いない。
「スカーレットはハンスの事が好きだったんだろう?」
「好きだったけど……エリーゼの方がもっと好き」
結婚するならハンスがいいとは思っていたが……彼ならば剣の稽古にもつきあってくれただろうし、私が令嬢らしく大人しくできないことを知っている。
今思えばハンスは家が男爵家で商家だから、私を貴族の価値観で見なかったのだ。
しばらく沈黙が続いたのでアルバートを覗き込むと寝息をたてていた。
キャバリアの特使から許可証を貰う事に疲労したのだろう。
夕食を食べている時に既に口数が少なかった。
それに、今日はアルバートは1日テンションがおかしかった。
始終楽しそうだったのだ。
かなりの緊張状態だったに違いない。
国王や特使はずっとアルバートの話に振り回されて、アルバートの思った通りに動いていたが……国王や特使がふざけるなと怒り出し切りすてられてもおかしくないギリギリのラインだった。
私はアルバートの顔をじっと眺めた。
相変わらず何もかも独りで背負おうとする兄の荷物をいくらか持てる人間になりたい。
だがいつもアルバートの背に荷物を積み上げているのが私なのだが……。
私はほぅっとため息を吐いた。




