第25話 キャバリア特使2
許可証は面談で渡したい。
そう要請した。
できれば許可証など出さず、キャバリアまで同行し、旅の間にキャバリアに行く意味などないと勇者に納得させられればいい。
キャバリアではどれだけキャバリアが酷い状態かと主張する為に、特使の服装や態度を落とそうという話もあったが、すでに手紙の文面でレンセント王に見下されている様なのでこれ以上は逆に侮られるだけだろうと結論づけた。
そのおかげか、レンセントにおける特使の扱いは悪くなく客人扱いである。
だか、特使には警備と言う名の見張りがおり、自由にレンセント城内を出歩けはしなかった。
ゆえに件の勇者の顔を未だ見ていないのだ。
勇者の顔を見た瞬間に話で聞いていた印象とはまるで違うではないか!っと頭の中で憤った。
冷酷で笑わない勇者だと聞いた。
凄まじく整った顔の勇者がにこやかに爽やかに挨拶をする。
まだ若い青年だった。
そして、妹と紹介されたスカーレット嬢もまた美しい女性だった。
緊張の為か、たまにうつむき睫毛を震わせる様は庇護欲を掻き立てる。
小物で傲慢な勇者だと聞いたが、話をすれば掴みどころがなく、優秀な文官が振り回されていた。
どれが真実なのかわからない。
私たちは優秀な自国の密偵に裏切られているのか?
何もかも信じられなくなった時に勇者アルバートは言ったのだ。
『クローネ女王』と。
女王は女王となった時から別の名前を名乗っていて、既に幼少期の真名を知っているのはキャバリアにもほとんどいない。
魔女の真名を知っているなんて何時でも殺せると言ったも同然だ。
私はキャバリアに勇者を入国させない選択肢を選べなくなった。
そもそもこの男の目的は何だ?
この脅しを入れる為に面談を最小人数に制限したのか?
安易にこの男を殺害したらキャバリアの内部情報がどこから漏れたのかわからなくなる。
キャバリアに招き入れて探るしか手は無かった。
要求されるままに許可証に署名をする。
勇者とその妹が席を立つと、私は調子が悪くなったと退室して与えられた自室に戻った。
優秀な文官はさらに国王から情報を得ようと頑張っているだろう。
私は密偵への指示を出す。
勇者の動向を追うように。
それからキャバリアにも予想外に不味い事態になっていると報告書を書いた。
勇者に入国許可を出したこと、山を越えると言っていたこと、女王の幼少期の真名と出自を知っていたこと。
レンセントの勇者の情報は誤りの可能性があること。
簡潔に書いて魔法で女王に飛ばした。
そして翌日、レンセント王とキャバリア特使は勇者に出し抜かれたことに気がついて慌てるのだ。
勇者とその妹は許可証を持ってそのまま行方をくらませたのだ。
城から自宅に戻るだろうとロッシーニの屋敷を張っていた密偵は一晩して馬だけが戻って来たことで、異変に気がついた。
馬もなく海までの遠い道のりを移動しないだろう……それともそう思わせる罠なのか?
本当に山に向かったのか?
判断がつかずにあちこちに密偵を飛ばしたが、足取りは掴めなかった。
ロッシーニの屋敷に勤めていた男に金を積んで話を聞くと、スカーレット嬢は確かにスカーレット嬢で間違いないらしい。
勇者は確かに過去にはスカーレット嬢を虐待していたこともあるようだ。
そしてスカーレット嬢が失踪していた期間があり……スカーレット嬢が戻ってきてから勇者アルバートは別人の様に変化したらしい。
最近は勇者が妹を溺愛していたとも聞いた。
つまり密偵の情報は今のアルバートではなく、少し前のアルバートの印象ということだ。
それが計算から来るものなのかはわからないが、完全にけむに巻かれた。
そして勇者の言葉のどれが嘘でどれが本当なのか未だにわからないのだ。
私は数日でレンセントにはこれ以上の情報は無いと判断して、キャバリアに戻る事にした。
頑張ればミザリーの港で追いつけるはずだ。
レンセントの国を朝も夜もなく駆け抜けた。
だか、レンセントの国を出る前に勇者がキャバリアの王都に入国したと報せがきて、三人は崩れ落ちる事になる。
アルバートは全て本当の事しか言わなかったらしい。
『呪われた王子は自国を滅ぼした魔女に謝りたい。』にタイトルを変更するかもしれない。
かなり行き当たりばったりに書いているせいです・・・すみません。




