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第22話 レンセント城

「レンセント国王が呼んでいる。明日はレンセント城に一緒に行こう」

数日してアルバートが城から帰宅した時に言った。


翌日、マントのフードを目深に被りアルバートに手を引かれてレンセント城の中を歩く。

途中アルバートは人に呼び止められて世間話をすることがあっても、特に私を紹介せず。

相手がそちらは?っと尋ねても言葉を濁した。

私は始終冷や汗をかきながらアルバートの後でうつむいていた。

知りあいにあったら騎士団服を返却しなければいけなくなる……全ての計画が無になってしまう。

国王の部屋に着く頃には精神的にぐったりしていた。

国王の部屋には事前にアルバートがお願いした人間しか居なかった。

国王とその側近とキャバリア特使。

私は部屋に入るとフードを外した。

アルバートと私は国王に挨拶をした後、キャバリア特使に紹介された。

キャバリアの特使は三人。

剣士と魔法使いと文官らしき人物だ。

「単刀直入に言って何故キャバリアに入国したいのですか?」

最初に口を開いた文官らしき男はアルバートを射る様な視線で見た。

アルバートは不遜に笑った。

「キャバリアに興味があるだけです」

相手は納得できなかったのだろう、更に聞いた。

「キャバリアに入国するのは2人だと聞いたが……」

アルバートは貴族らしく優雅に頷いてみせる。

「同行予定の妹スカーレット・ロッシーニです」

私は優雅に礼をしてみせる。

「人間は私と妹の2人だけ。あとはテイムした魔物を連れていくかもしれません」

「テイムした魔物だと?」

国王と特使は驚いた。

魔物をテイムするには魔物が契約を了承しなければならず、意志の疎通ができる魔物は強いこともありテイムできる人間など珍しかったからだ。

「今は連れていないようだが?」

特使の文官は目をギラギラさせて聞く。

「キャバリアに行く途中でテイムする予定です。そちらの方が主な目的なので、事前にお話にあったように特使の方と行動を共にすることはできません」

アルバートがすらすらと都合の良さそうな嘘を並べるのを私は冷や汗をかきながら呆然と聞いていた。

「では1ヶ月後にキャバリアに到着しない可能性があるということですか?」

アルバートは優雅に微笑んだ。

「山を越えるつもりなので、そんなに掛からないでしょう」

国王も特使も絶句した。

未だかつてあの山を越えた人間は居ないのだ。

「どうやって?」

特使の剣士が呆然とつぶやいた。

「あの山にはアイスドラゴンとフェンリルが居るのはご存じですよね?」

アルバートは更に爆弾を投下する。

国王も特使もそんなの知る訳がない。

「そんな馬鹿な!」

特使の剣士はこの中で明らかに1番若い。

最初に馬鹿馬鹿しい話に耐えられなくなった。

「レンセントの勇者の中でも貴方はそんなに強いわけではないと聞いた! ドラゴンやフェンリルが相手にできる実力とは聞いていない! 更に妹は行方不明で、勇者殿とはことさら不仲で、誤って勇者が妹を殺してしまったのではないかと噂されている! 行方不明としている理由は何だ?」

アルバートはギラリとその剣士を見た。

私はアルバートに殺された事になってるらしい。

私は笑って良いのか悲しんだらいいのかわからなくてアルバートをしげしげ眺めた。

当のアルバートはもちろんそんな噂になってることなど知っているのだろう。

「情報収集お疲れ様です。そうですね。城で流れている噂は嘘ばかりですが、私が名ばかりの勇者なのは本当です。そうですよね? 国王?」

話を振られた国王は一瞬視線を外した。

「スカーレット嬢の失踪は公爵家からの縁談が嫌で逃げたのだと聞いた。そうであろう?」

突然国王から話を振られて私は固まった。

そんな話聞いていない!

「私はスカーレットを娶るつもりです。私たちは義理の兄妹で愛しあっているのです。」

アルバートが更にろくでもない嘘を吐き始めた。

私は必死で表情にでないように右手で左手を握りしめた。

アルバートが私に微笑みかけたので私はぎこちなく微笑み返す。

「公爵家からの縁談はロッシーニ家の誰かをとの話だったので、母に行ってもらいました。家格的に断れる話では無かったので……この話はここだけの話にしてください」

アルバートはまるで被害者の様な顔をしてうつむいた。

継母が公爵家に嫁いだ理由がやっと理解できたが……内容があまりに酷い。

私は青くなりこの場で気を失いたかった。

ロッシーニの誰かとは確実にスカーレットかエリーゼのどちらかを指していった言葉だ。

それを曲解して継母を送り出し、スカーレットを行方不明としているとアルバートは堂々と言ったのだ。

公爵家との関係はどうなっているんだろう……もともとロッシーニ家はどん底だったが、もう底が見えない。

「キャバリアにはスカーレットが行きたいと言ったのです」

アルバートはさらに私に微笑みかける。

確かに私がキャバリアに行きたいと言ったけど……。

「つまりキャバリアに行くのは、キャバリアや女王が目的ではないと言うことですか?」

文官の人は考えながら言う。

山を越えることや魔物をテイムするなどと世迷い言の上に、メインの理由は色ボケ?

頭がおかしい……そう思わせる狙いなのか?

ここに居る誰もがそう思った。

少なくとも特使がレンセント国内で必死で収集した情報はどれも真逆の話ばかり。

何を判断材料にしてよいか分からず、特使は混乱するばかりだ。

この男が虐待の末に殺して埋めたと噂される妹が本当に目の前の娘なのか?

弱いとされている勇者は、本当は強くてドラゴンやフェンリルを倒せるのか?

「レンセント国王は国交回復を希望されているようですので、キャバリアの国の視察も目的の一つですよ。」

アルバートは国王に視線を移し、国王は軽く頷いた。

「勇者どののキャバリア行きが、レンセント国内でどの様に噂されているかはご存知ですか?」

アルバートは優雅に微笑んでうなずいた。

アルバートが魔女を退治に行くと言うあれだ。

「私はレンセントで流れている女王の評判が事実では無いことを知ってます。」

国王と特使が明らかに動揺した。

私は更にアルバートの話がわからなくなった。

アルバートは何を言っているんだ!?

「キャバリアへの入国許可書を今日くださるんですよね?」

アルバートは強く言ったが、誰も反応ができない。

こんな得体が知れない人間をキャバリアに入れていい訳がない。

そもそもレンセント国の人間が誰も知らないキャバリアの女王について、この男が知っているなどとあるわけがない。

特使の剣士が鼻で笑った。

はったりに違いないそう思ったらしい。

「女王の評判?何の事を言っているかわからないな。」

アルバートは不敵に笑った。

「では私が女王に関して事実を言ったら許可書を今下さいますか?」

剣士は不敵に笑って言い返した。

「言ってみろ。」

特使の文官と魔術師が焦ってとめようとしたが、アルバートが言葉を紡ぐ方が早かった。

「クローネ女王は御母様が森の魔女で御父様がキャバリアの筆頭魔術師でしたね?」

それはユリウスが言っていた。

つまり事実だろう。

特使の中で1番年をとっているだろう魔術師が驚愕してアルバートを見た。

そして諦めたのか許可証を書いてアルバートに渡したのだ。

アルバートは場をかき回すだけかき回して、全部自分の都合のいい方にもっていった。

ただし、後始末はどうするつもりなのかさっぱりわからない。

アルバートは特使に許可証を無理やり書かせてもぎとると、国王の制止も流して城をでた。

家の馬車から馬を外し、私を乗せて馬を走らせる。

私は何故こんなにアルバートが焦っているのかわからず、言われるがままになっていた。

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