第21話 革命家
「キャバリアに行くのは、ユリウスと俺とスカーレットと魔王?」
今日は魔王と打ち合いができて満足したのか、ご機嫌でアルバートはキャバリア行きの話をする。
私はうなずいた。
「でも魔王とユリウスは魔王城に戻される場合もあるのよね?」
私は魔王を見る。
「一週間くらいなら戻されることは多分ない」
確かに私が魔王城に居た1年の間に勇者が魔王城に挑んできた事がない。
「魔王城は今は攻略する勇者がいないのかしら?」
私はアルバートを見ると、アルバートは顔をしかめた。
「今この国に居る勇者は老人と若者しかいない。俺はわりと勇者より貴族としての役割の方に比重が寄っているから魔王城を攻略する時間がない。……もっとも現状まったく勝てる気がしない」
アルバートはさっき稽古をつけてもらって、魔王に軽くあしらわれ、実力の差を思いしったらしい。
「ただ、他国の勇者はわからない。魔王城攻略はレンセント国王に許可をとるはずだから調べておこう」
「言っとくが、今のように城の内部をショートカットして魔王の間にきたら攻略にカウントされないからな」
魔王は眉間にシワを寄せながら言った。
アルバートはうなずいた。
「魔王城の攻略は勇者の一生を掛けた挑戦で目標だ。この先挑戦することがあってもズルをするつもりはない」
「その時は顔見知りでも全力で潰す」
魔王はにやりと笑う。
アルバートももちろんと爽やかに笑いながら頷いた。
打ち合いしたあとだからか、魔王と勇者なのにちょっといい感じの友人みたいになってるんだけど……なんだこれは。
ロッシーニの人間は自分よりも強いと認めると敬意を払うところがある。
アルバートはすでに魔王に完全に心酔していた。
「しかしキャバリアとレンセント国王には魔王を連れていくとは言えない。あと街に入るのにスカーレットか俺と一時的に契約をかわしてもらって隷属してもらわないと駄目だろう」
「隷属契約は無理だから、友好契約だな。ユリウスはスカーレットに。俺はアルバートの下につく」
街に魔物を入れるにはテイムしていないと駄目なのだ。
「キャバリアの特使はまだレンセントに居て、できれば一緒にキャバリア入りしたいらしいが……」
「海路はない」
魔王は首を振った。
最初から海路の選択肢は無いのだ。
アルバートは頷いた。
「一緒でなければいけないわけでもないだろう。交渉してこよう。そろそろ顔合わせに城に呼ばれるだろう。テイムしている魔物は人数に数えないはずだから、スカーレットと2人でレンセント城に行こう。ただスカーレットは対外的にはまだ行方不明のままにして置きたい。戻って来たと知れるとあちこち不味いことがある」
アルバートの言う『あちこち』はわからなかったが、私も騎士団服を返却したくなかったので頷いた。
どうでもいい話だが騎士団服を着たアルバートは凄くかっこ良かった。
何時もの城に行く為の貴族服は甘さがあるのだ。
騎士団服はストイックさが全面にでて、アルバートの雰囲気に合っている。
普段ももう少し甘さ控えめの方が似合うに違いない。
貴族服のあのたっぷりのタックやビラビラはアルバートにはあまり似合わない。
貴族の流行りなのだから仕方ないのだが。
「山はどうやって越えるつもりだ?」
私が要らんことを考えている間にも、アルバートがさくさくと話を進める。
「魔王城配下だったフェンリルとアイスドラゴンがその山に居る。ついでに顔を見たいし、乗せて貰えばいい」
「フェンリルとアイスドラゴン……」
アルバートは言葉を失った。
山の険しさが1番の問題だと思っていたが、そもそも生息している魔物のレベルが人間にはどうしょうもない……。
「それでキャバリア王都に到着後はどうするんだ?」
「目的は魔女との和解と呪いの解除だが……」
魔王と私はユリウスを見る。
「魔女とユリウスは幼馴染みらしい……それで何で魔女はキャバリア王家を乗っ取ったんだ?」
魔王は腕を組み黙り込んだ。
ユリウスと念話で話をしているのだろう。
「レンセントで聞く話とまったく違うな……。それじゃあ魔女はただの革命家だ」
魔王は難しい顔でさらに黙り込んだ。
私とアルバートはそんな魔王とユリウスを黙って眺めた。
魔王の眉間に皺がよる。
「最悪、魔女を殺せばいいと思っていたが、ユリウスはそれは望まないのか……」
魔王はさらに物騒な事を言う。
「呪いの解除よりも魔女に謝罪がしたいらしい」
アルバートは首を傾げた。
「謝罪?」
そもそものキャバリア王家は独裁的で国民をかえりみない王家だったらしい。
ユリウスはその第6王子で病弱な事もあり、もっとも政治に遠い王子であった。
側妃の子どもで病弱だったユリウスは城の外れに居を構えていた。
静養という名の隔離だ。
魔女は城の筆頭魔術師の父と森の魔女の娘で城に住んで居た。
名はクローネというらしい。
クローネは城のあちこちを自由に行き来しており、ユリウスとは友達だったらしい。
「それで何故呪いを掛けられたんだ?」
アルバートは不思議そうに聞いた。
「ユリウスはその娘が好きだったらしい……呪いを掛けられ隔離されて居る間に魔女は王家を皆殺しにしてキャバリアを手に入れ、ユリウスを始末しようとしたらしい」
「呪いを掛けずとも、王家の人間としてまとめて始末しても良かった気がするな」
アルバートは更に首を傾げた。
「ユリウスがクローネを好きになったことで彼女を追いつめたのかもしれない?いつも苦しそうな顔をしていた?」
仲が良かった王子に好かれていて呪いを掛ける意味がわからない。
「キャバリア王家そのものに恨みがあって、根絶したかったけど仲のいいユリウスを殺す事を躊躇った方が納得ができそうだな……。キャバリアに行ったら経緯を調べた方がいいだろう。それと下手をすると戦争になるから、キャバリアでは行動や言動には気をつけて欲しい」




