第20話 訓練
「まぁ詳しくは後でいいや! 魔王! 訓練しよう!」
私は魔王を見た時からうずうずしていたのだ。
毎日アルバートと充実した訓練ができていたとはいえ、魔王とのそれは別格だ。
滲み出る覇王の貫禄だけでも足ががくがくしそうだ。
私は戦いたくてしょうがない。
ユリウスはいつもの様にすっと後に下がった。
「アルバートも下がっていて!」
魔王はしぶしぶという程で、壁の剣をとる。
魔王が剣をもった瞬間にぐわっと威圧がかかった。
これだよ!
魔王が素敵過ぎる!
私はうっとりしながら剣を振るう。
ガンガンと剣が合わさる。
どれだけの時間そうしていたのか……。
魔王城に居たときは朝から夕暮れまで毎日魔王と打ち合っていたが、さすがにそこまでの時間ではないだろう……。
魔王がにやりと笑った。
「悪癖が抜けたな。」
私は魔王に誉められて嬉しくてしょうがない。
「ほれっ。」
魔王に風魔法で気軽にふっとばされた。
魔王が初めて魔法を使った所を見た!
ユリウスが叩きつけられないように、私を受け止めてくれる。
私はユリウスにお礼を言って、立ち上がろうとしてそのまま座り込んだ。
足が……しかも息もあがっている。
「はぁ。魔王最高」
私はうっとりと魔王のこの世のものとも思えない秀麗な顔を見る。
「なんだこれは……?」
私はすっかりアルバートの事を忘れていたが、アルバートは表情の抜けた顔で私と魔王を見てつぶやいた。
そして我に返るとキラキラした目を魔王に向ける。
「私も訓練をつけてもらえないだろうか?」
魔王は嫌そうに顔をしかめた。
「兄もスカーレットと同じ思考回路か……」
アルバートは剣を構えたが、魔王は剣を戻す。
「そんな軽装備なやつと打ち合ったら一撃で殺してしまうわ。」
アルバートは自分がただの部屋着のまま、魔王城に来たことに心底悔しそうな顔をした。
「では明日出直して来る!」
明日……さすがにスカーレットも兄の言動がおかしい事は分かる。
でも便乗して私も明日是非一緒に来ようと思って顔を輝かせた。
魔王は王座に座ると頭を抱えた。
「スカーレットが増殖した……。魔王が勇者に稽古つける訳がないだろうが!」
「ユリウスは魔王の配下なのだろう? 俺が居ないとキャバリアに行けない。だから、稽古をつけてもらえないだろうか?」
アルバートが懇願して、ユリウスが魔王に頭を下げた。
魔王は実はユリウスがめちゃめちゃ好きだと思う。
っていうか、魔王ってユリウスだけではなく配下をみんなめちゃめちゃ大切にしてる気がする。
つまり魔王はもう何も言えなくなったのだ。
翌日、アルバートはエリーゼからハンスの予備の騎士団服をかり、何のためらいもなく袖を通した。
そして、アルバートと私は夜になると魔王城に嬉々として向かった……。




