第19話 騎士団の制服
「それで、何で戻ってきたんだ?」
「隣の国に行くために! ほら! 勇者で兄のアルバートです」
魔王はため息を吐いた。
「あほか! 何の躊躇もなく、魔王城に勇者を連れてくるな!」
魔王が怒ると相変わらず軽い威圧がかかってぞくぞくする。
とりあえず、魔王が苦悩顔なのは慣れているのでそのまま話を進めた。
現状の説明をする。
「……というわけで、キャバリアにユリウスと行ってきます」
「山を越えたら3日か……」
魔王が言った。
「あの山は人間には越えられない。もし登れたとしても寒さで死ぬ」
アルバートは首を横に振る。
「騎士団の制服ならなんとかなるかな?」
私は自分のマントを広げて見せながら言った。
「どういうことだ?」
アルバートは知らないらしい。
これもしかして騎士団の機密なのかな?
騎士団の制服以外で付与のついた、服や鎧の話はまだ聞かない。
そのうち王族、勇者と広がって一般的になるのかもしれない。
「騎士団のマントは温度調整機能が付与されているの。最近騎士団のとある部署で開発されたらしくて、騎士団の制服はすごい付与がついてるの」
「確かに魔王の攻撃すら通さないとか、ドラゴンの鱗並みの防御力だな」
魔王も頷いた。
「騎士団の制服が?!」
「だから、騎士団を辞めても返す気にまったくならなくて……」
それもあって騎士団には、私は失踪したままになっている。
「騎士団の制服って、三セット支給されるからマントは私の予備がアルバートに貸せるけど……制服はサイズがなぁ……。誰かに借りられないかな?」
私は仲の良かった同じ師団の人間の顔を思い浮かべる……。
さすがに騎士団の人間に制服を借りる事は難しいかもしれない。
そして、気がついた。
「うちの師団は遠征が無いから、こっそりエリーゼにハンスの予備の制服を持ち出して貰えばいいかも」
ハンスはエリーゼの夫なのだから、制服を持ち出すくらい難しくない。
制服は普段2セットもあれば充分で、3セット必要なのは遠征に行く師団くらいなのだ。
私の居た師団は貴族が多く、危険な場所や面倒な遠征を振られる事が無かった。
アルバートが他人の、それも騎士団の制服を着ることに難色を示したが……だが、山越えには興味があるらしく難しい顔で悩んでいる。
そんなアルバートは放置して話を進める。
「だけど、ほぼ垂直な崖がある山を登るには訓練が必要?」
「問題ない」
魔王は何か手があるらしい……。
魔王とユリウスは飛べるみたいだから、抱えて飛ぶのかな?
それはアルバートが拒否しそうな気がするな……。
その場合、私は魔王とユリウスどちらに抱っこされるんだろう……どちらも捨てがたい。
でもアルバートが魔王に抱っこされた図が見たいよね……。
美形魔王×美形勇者な図は絶対見たいかもしれない。
それだ。
それしかない。




