第18話 魔王
「私ユリウスと話をしてくる」
「俺も一緒に行こう」
「……」
できれば断わりたかった。
だが、どれだけ後回しにしてもいつかは言わなければいけないのだ。
私は頷いた。
「キャバリエには、私とユリウスとあと……あと……」
なかなか魔王と言えなかった……。
言いよどんだからか、アルバートの目がこわい。
「あと?」
「あとは……どうかな? 話を聞いてみないと……」
別にキャバリエに、魔王を連れて行かなくていいんじゃないかな?
今日の晩にこっそり魔王城に行ってユリウスだけ連れて、朝に家に戻って来ればいいんだ。
そうしよう。
そうすれば魔王城にアルバートを連れていくこともないから、綺麗に魔王をスルーできる。
私は夜中に騎士団の制服を着込み、愛剣を差して森に入った。
魔王城にたどり着くとほっとしたが……相変わらず跳ね橋はあがっている。
夜中に魔王城攻略する人間は居ないのだろうか?
私はぼんやりと魔王城を見上げた。
「それでなんで魔王城なんだ?」
不意に後ろからアルバートに声を掛けられて私は飛び上がった。
「なっ!? アルバート?!」
「また失踪するつもりなのかと心配でついてきた。まさか夜中にこんな森の中に入るとは思わなかったけどな」
アルバートはいつもの部屋着に剣を持っているだけだ。
家を出るのを見られてしまったらしい。
私があわあわしてると、跳ね橋がギーッと音を立てて降りてきた。
私はあきらめた。
「私の師匠は魔王なの」
アルバートの反応はこわくて見れず、そのまま跳ね橋を渡る。
そしていつもユリウスが使っていた隠し扉から、隠し通路に入った。
アルバートは無言でついてきた。
この隠し通路に、アルバート(勇者)を入れても良かったんだろうか……途中を全部スキップして『魔王の間』の前にでてしまうのだが……。
私は魔王にも怒られる気がしてきた。
これは駄目だ。
先にアルバートに怒られておこう。
私はピタリと立ち止まった。
恐る恐るアルバートを振り返る。
アルバートも足を止めて私をみた。
「それで何で魔王城なんだ? 騎士団の同僚とか、友人とか、頼れる人間は居ただろう?」
私は首を傾げた。
「一撃で手っ取り早く死にたかったのです」
アルバートは黙ってしまった。
あと、魔王と戦って死んだら剣聖っぽいからだ。
私には剣聖っぽさが最重要だったが、兄にそれを言うのははばかられた。
さすがに火に油を注ぎたい訳ではないので、怒られそうな台詞は控えた。
「「……」」
沈黙が続いた。
アルバートはため息を吐きながら聞いた。
「魔王はどんな魔物なんだ?」
そういえば、私はアルバートの仕事の内容など聞いたことが無かった。
だから、勇者であるアルバートがこんなに近くにある魔王城に来たことがないとは思わなかったのだ。
「魔王……」
ここでかっこいいは多分違うし……どんな?
「見た目は人間に近くて、優しい?」
「……優しい? 魔王が?」
アルバートはかなり不機嫌になった。
そんなタイミングで向こうからユリウスがきた。
「ユリウス!」
私はユリウスに走り寄って飛びついた。
アルバートは警戒して剣を抜いたが、攻撃されないと確認して剣を収めた。
ユリウスは私を抱き止めた。
そして手を離すと、いつもの様に『魔王の間』に続く通路を先に進みはじめた。
私はユリウスの後についていく。
「彼が『ユリウス』なんだろう? 話さないのか?」
アルバートは不思議そうに私に聞いた。
「ユリウスは理解はしてるけど、話はできないから……。」
言っていて気がついた、いつも私が一方的にまくし立てるか、魔王が居れば魔王が通訳してくれていたことに。
つまり、ユリウスだけキャバリアに連れていったら意思の疎通が取れない……?
ユリウスは『魔王の間』の前に来ると何時ものように脇に避けた。
私は扉を手で押し開ける。
最初の時の様に音楽が鳴る事は無かったので、私が来る事は分かっているらしい。
魔王は王座に座り、やっぱり肘掛けに右肘をついて頬杖をついていた。
そして、渋い顔で言った。
「おかえり?」
私は満面の笑みで答えた。
「ただいま!」
やる気が無さそうでもやっぱり魔王はかっこ良かった。




