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第16話 ロッシーニ家の現状

アルバートは人が変わったように、戻ってきた私に優しくなった。

つまり、兄の機嫌の良さは今も持続している。

だけど私は兄がまた突然怒りだすのでは?とびくびくし、例の悪癖をこじらせながらずるずると日々を過ごしている。


そして、私は騎士団を退団したために、何もする事がなかったので、今まで手を出さなかった家の執務を手伝うようになった。


我が家の状況は私が思っていたより悪かった。

収支の報告書を見ながら、ため息を吐く。

女が三人も居ながら、誰も社交をこなさなかった為に孤立無縁に近い。

さらに継母の浪費のせいで財政難、さらに縁を獲る為に婚姻を結べばまだ良かったが……妹は下位貴族それも男爵家の次男と結婚している。

「エリーゼがもっと上位貴族と結婚してくれていたら良かったのだけど……」

私はため息混じりに呟いた。

向かいの机にいるアルバートは書類から顔を上げて、私を見て微笑んだ。

「家なんてどうでもいいんだ。エリーゼが幸せならそれでいい」

私は驚いた。

アルバートがこんな事を言うなんて……。

そして、自分がいかに兄に我が儘ばかりを言っていたのかを思い知らされた。

兄の気持ちも知らずに、家に帰ってきた時に『エリーゼを嫁に出すなんて酷い』と兄を責めた自分の浅はかさを呪いたい。

はぁ。

隣の国に行く話も進めたいのだけど……。

家の現状も放っておけない。

書類を見れば見るほどため息しかでてこない。

一年前私が兄の言われるまま、騎士団を辞めて家の執務を手伝っていたらもっと何かできたのだろうか……。

少なくともちゃんと社交をこなそうと思ったかもしれない。

私は家の現状をまったく知らなかった。

騎士団に所属していたのも、結局私のわがままだ。

あれだけ兄に反対されて、退団をせまられていたのに私は辞めなかった。

「……アルバート、私もう我が儘は言わないわ。どこでもいいから上級貴族の誰かに私が嫁いだほうがいいんじゃないかしら?」

一年前のアルバートの気持ちがやっと理解できた。

打開策はもうそれしかないだろう。

アルバートは手に持っていた書類を机に置いて、私の方に歩いてきた。

「スカーレットも俺を置いてこの家を出ていくの?」

椅子に座っている私の背後からアルバートは私をぎゅっと抱きしめた。

「……スカーレットは俺の側に居て欲しい。」

抱きしめられて耳もとでささやかれて、私は赤くなる。

アルバートは一年前とは別人の様に変わった。

以前なら、自分の意に沿わない事を私が言ったら冷酷に鼻で笑って「お前は考えが浅い!」とか「馬鹿かお前は?」とか罵倒されて話を聞いてもらえなかったはずだ。

それにエリーゼや私の幸せなど考えず、家の為になる縁談を押しつけただろう。

……人が居ない屋敷はそれ程寂しかったのだろうか?

寂しかっただけであの兄がこんなに変わるだろうか?

私は兄の顔を繁々と眺めた。

「それに、母が公爵家に入ったから、しばらくすれば多少改善されると思う。」

「公爵家?!」

私はびっくりした。

継母の再婚先が上位貴族だなんて思いもしなかったのだ。

「母は本当は優秀なんだ……父が亡くなるまでこの家を仕切っていたのは母なんだ。今まで父が亡くなった悲しみから抜け出せなかっただけだからね。だからスカーレットはそんなに心配しなくて大丈夫だよ。」

聞けば、公爵家と言ってもかなり高齢の人に嫁いだらしい。

私は何か釈然としないものを感じたが……にこにこしながら私の頭を撫でる兄にそれ以上何も言えなかった。


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