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第15話 無自覚な人タラシ

(アルバート視点)


スカーレットが居なくなって、やっと気がついたのだ。

自分が要らないものばかりを大切にしていた事に。


まず、母。

母は俺が居たから、この家に嫁いできたと俺に全ての責任を被せた。

だが、選択したのは母であり俺ではない。


それから、エリーゼ。

スカーレットが大切にしていたから、放置していたのだ。


どちらも俺が要らないのに、大切に維持しようとしたものだ。

あれもこれも維持しなければいけないと、プレッシャーを感じて、自分の思うように動いてくれないスカーレットにあたっていた。

その為に唯一大事に思っていたはずの、スカーレットが手の中から零れ落ちた。


もう、要らないものは抱えこまずに最初に棄てよう。


最初はエリーゼだ。

甘やかすスカーレットが居なくなったら、少しずつ体重が落ちた。

「エリーゼは可愛いから社交界デビューしたら、申し込みがたくさん来るね」

エリーゼは俺の甘言にのせられてダンスの練習を始めた。

ダンスは見た目の優雅さを求めれば、かなりハードな運動なのだ。

エリーゼは元々の運動神経は悪く無かった。

みるみる体重が落ちた。

そうして社交界デビューしたエリーゼが恋したのは、スカーレットの同僚だった。

スカーレットがいつもお菓子を食べながら騎士団の話をして、そして『結婚するならこの人が良いと言っていた男』だと言う。

それを聞いた俺は耳を疑った。

その男がスカーレットの理想の結婚相手。

エリーゼの世界はスカーレットを中心に回っていたのだ。

だから、エリーゼはスカーレットが良いと言った男に盲目的に恋をした。

その男は一度スカーレットと婚約したいと、家に打診してきたやつだ。

その男だけではなく、騎士団の爵位もちの男は誰もかれもが、スカーレットとの婚約を希望した。

俺はスカーレットに騎士団を辞める様にすすめたが、スカーレットは頑として聞かなかった。

だから俺は騎士団の制服を見ると気分が悪くなるほどに、騎士団が嫌いだ。

スカーレットが嬉しそうに騎士団の話をするのも耐えられない。


我が妹スカーレットは無自覚な人タラシなのだ。

人がまいっている時に一番欲しいと思う言葉をその人間にあたえる。

そして無邪気に『好き』と言うのだ。

だから何人もの男が同時に勘違いをするのだ。


俺は義妹エリーゼがその男が良いと言った時は好都合だと思った。

伯爵家からの婚約の打診が、下位の男爵家に断われる事など無いのだ。

これで、要らないエリーゼと、スカーレットの理想の結婚相手がまとめてかたずいた。


エリーゼがあまりにも上手くいったから、次は母をどうにかしようと俺は思った。


母は継父が亡くなってから、全てを俺に押し付けた上に伯爵家の財を浪費し続けた。

俺は母の浪費した財を取り戻そうと奔走したが……母の浪費のスピードの方が早いのだ。

俺は母に幾度となく注意をして、懇願したが、全て悪いのは俺なのだと言う。

そのうちに、継父の死に不審なところを見つけた。

証拠を押さえると俺は母に再婚をすすめた。

特に相手は悪くない。

母はまだ若いし、綺麗な方なので今度はうまくやるようにと言い含めて外に出しただけだ。

ただし、戻ってくるなら過去の罪を告発するという脅しがついているが……。


2人が居なくなっただけで、ほとんどの荷物を降ろした気がした。

そして、何もかもうまく回り始めた。

そうしたらスカーレットが戻って来たのだ。

そして、剣で勝負をして負けたら俺と結婚すると言う。

俺がスカーレットに負ける訳がない……。

たが、最初にスカーレットが騎士団の制服を着てる事でまず頭に血がのぼった。

そして、スカーレットは驚くほど動きがよくなっていた……あっさり俺は負けたのだ。


「やっぱり俺はロッシーニ家の血ではないから、駄目なのか……」

俺がずっと思っていた事を口にする。

「そんなこと誰も言ってません」

スカーレットは即座に否定した。

「実際、スカーレットに負けた」

「これは素晴らしい師と、チート訓練の賜物なので才能とは関係ありません。それに、兄さんが感情的にならなければ、私はまだ勝てなかったかも知れません」

スカーレットは勝負に勝ったのに、まだ俺の方が強いのだと言うのだ。

この無自覚な人タラシは本当にそう思っているから、質が悪いのだ。

そして勝ち誇るでもなく、まるで自分が負けたかのように落ち込んだ。

負けたはずの俺がスカーレットを慰めた。

やっぱりスカーレットはスカーレットだった。

そして俺は『スカーレットの理想の結婚相手』になるべく努力することにした。

エリーゼの相手を眺めて大体のイメージはわかっている。

つまり『幼少期の自分』の様に優しく甘やかしてくれる男が理想なのだ。

小さい頃は俺がスカーレットの理想の男だったのだから……。

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