97話 体育祭と自動運転
「ほい、授業自体は8/21くらいから始まってるくせに、土曜日の9/1にやりやがる二学期始業式が終わったな」
「最初と最後の言葉の落差がひど杉内」
途中まで同意できたのに、何でボケをぶち込むんですかね。百引先輩。てか、どういうボケなんですか。
「パソコンで「すぎない」って打ったらミスって変換かました時によく出てくるランキング一位ってボケだぜぃ☆」
「ボケを殺すなフミ」
「お前らは話に割り込むな」
「「ふひっ。左遷」」
「謝る気ねぇだろ」
「「ごめんなさい」」
怒られての秒速の謝罪。僕じゃなくても見逃さない。
「ですが、先生。土曜日に来させんな馬鹿ってのは同意しますが、一応、昨日までのは講習ですよね?授業開始が今日からな以上、始業式が今日なのは仕方ないのでは」
「ぐぅ」
「先生までボケるんですか!?」
どんだけ今日の始業式が嫌なんですか。先生までボケたら収拾が……つくか。習先輩や清水先輩達が動かれてないし。
「まぁ、元から半日で終わる土曜日が半日で終わる式で終わったからな…」
「何、生徒みたいなこと言ってんですか。先生方は土曜日も、終わってからもお仕事あるでしょう?」
終わったら即座に帰るので、本当にお仕事されてるかは知りませんけども。
「あるときもあればないときもあるんだわ」
「ですか」
それなら仕方ない……のかな。ていうか、
「雑談している暇があるなら〆ません?先輩方も暇……」
暇そうにされてなくない? なんか受験勉強されてない? ていうか、何人か数学の赤本出されてる? それ、今からやり始めてまともな話始まったらどうすんですか。
「よし、遊んでるとみんなの邪魔になりかねんな。さっさと聞くこと聞くか。えーと、二学期の大きな行事と言えば体育祭と文化祭だが……、お前ら、どうする?言わずもがな、俺らの学校は受験生たる3年は別に不参加決め込んでも構わん。あぁ。一応、言っとくが体育祭も文化祭も出ない!と決めても見る方での参加は出来るぞ。とはいえ、体育祭は聞くまでもねぇよな?」
「「Yeah!|We do not participate in the festival《参加しねぇよ》!」」
Yeah! の謎に高いテンションの後に参加しないって答えが出ることあるんだ。百引先輩に有宮先輩なら、そのまま突っ切りかねないかと思ったけど、その辺、ちゃんと良識はあったのね…。
いやまぁ、出るっつっても、先生が止めるだろうけど。球技大会出てねぇのに体育祭出るんかいって。あーでも、先生ならその辺、「お前らの自由にしろー」っていうかな? わかんない。
「カイ。一応、補足しとくけど、あの二人、良識がないわけじゃないけど、危惧した通りにノリで突っ込まなかった理由はそれじゃないよ」
「え。じゃあ、なんなんです?」
「魔法を使えちゃいますからね。負けそうになったときでも縛るなんてことは多分、しませんので。相手にならない!という方が強いかと」
戦闘狂か何かですか? 何でそんなノリで生きてるんですか……。
「あ。そうだついでに聞いとくけど、カイは体育祭に出るの?」
「出ませんよ。僕がばちくそに運動できるわけでもなし。三年生でも体育祭に参加したいやる気ある子らの脚を引っ張る気はないです」
例年、三年生は本気で優勝したい組と思い出作りに遊びたい組に別れてはいますけどもね。体育祭で遊ぼうって気にはならないです。
「なら、文化祭はどうする?」
先生の言葉で先輩達の目線が一気に僕に集まる。え、え、何で何です?
「まぁ、俺ら、受験は何とでもなるし」
「時間もひねり出そうと思えばひねり出せますし」
ひねり出す(物理)が可能ですものね。だから、一番、受験がやばい僕に合わせてくれると。んー、どちらでも構わないんですけれど。「どっちでも!」なんて言えないですよねぇ。でも、正直、どっちでもいい。だって、このクラスって人数比を見ると僕より先輩方のが圧倒的に多いですし。
やるなら先輩方がメインになるのは避けれませんし。あ。それなら、
「由緒正しい民主主義式で行きましょう!」
「多数決か。矢倉の案でいいか?」
即座に全員、頷いてくださった。
「それなら「ほーい、じゃー、文化祭やるぞって人―!」…はぁ」
近衛先生が音頭取ろうとしてたのに即座に百引先輩が割り込んだ。先輩らしいノリだとは思うけど、傍から見てるとヤバめ。
でも、そこは先輩方。百引先輩の奇行にも慣れておられるようで、全員が手を挙げ……って、えぇ、全員!?
「まぁ、俺らがどっかに行ってたせいで若干、学校からも遠巻きにされてるしね」
「ここらで一回、かましておこうかと思いまして」
「余計に遠巻きにされんじゃね?」
真顔でぽろっと零す先生。ですよね。僕もそう思います。
「腫物扱いよりかは、突き抜けてしまってなんかすごいと思わせるほうがいいでしょう」
「それは……まぁ、一理あるか」
「一理を越えて百里」
「百里を越えて排他的経済水域」
??? ちょっと百引先輩と有宮先輩が何言ってるかわかんない。こういう時は無視したらいいのかな。お。瞬先輩と羅草先輩、謙三先輩の保護者組が回収していった。…何でずた袋にお二人を詰めているのかは考えないことにしましょう。
「内容はどうすんだ?別に今じゃなくてもいいが」
「それはこれから考えます」
「カイの意思がどうかがわかんなかったので。カイを混ぜるか混ぜないか。混ぜるならどういう役回りにするかとか」
「あー。そりゃ、そうだわな。じゃあ、今日中に決めれんのはそんなもんか。よし、じゃあ解散すっぞー」
回収した三人とされた二人は帰ってきていないのですが……まぁいいか。
「で、カイ。実際問題、どうする?混じる?」
「先輩達の目的次第ですね」
文化祭を「ここらで一回、圧倒してしまえ!」という場にしてしまうのか、「俺らは協調する気あります!」という場にするのかで変わる気がします。何しろ僕、魔法なんて使えないわけですし。
「別に使えなくてもどうとでもなるよ」
「なのですか。なら、混ぜてくださいな」
参加せずに見ているのも楽しいでしょうけれど…。僕一人だけが不参加ってなると周囲からの目がアレになりかねませんし。参加できるならしておきましょう。
「了解。皆もいいよね?」
「「勿論!」」
習先輩が問うと、帰らずに教室に残っていた5人以外が即座に返事をしてくださった。これで参加確定ですね。
「で、文化祭は何をしますか?」
「それはまた今度にしよ。参加するってのは決めたもの。今日のタスクはそれで終わりでいいでしょ」
「ですね」
今日、決めてしまわないのはきっと僕のため。なのでしょうけれど。だって、参加するって決まってなかったから何をしたいとか一切、考えてないもの。
三年だったら準備期間取りたくなーい! とかになるんだろうけど、僕は最悪、先輩達に泣きつけばいくらでも時間は確保できる。だから、やりたいことがやれるね。
「それより、意見を聞きたいことがあるんだけど、いい?」
「構いませんよ。どこでお話します?」
「私達が誘っていますし、私達の家はどうでしょう?」
「了解です。では、帰りましょうか」
はーい。お二人と一緒に教室を出ると、お子さんたちも合流。とりとめもない話をしながら駐輪所に行って自転車を回収。
二学期になってもたまに習先輩達のお馬さん──センに乗って先輩達は帰るのは続行されるんですね。よくよく考えなくても違和感マシマシだけど、センとの時間を大切にして違和感は魔法で殺されてるんだろうなぁ。
自転車に乗りながら、邪魔にならないように気を付けつつ、高校にありがちな二学期明けすぐの実力テストの話題で盛り上がる。ちょっと不安そうな顔をしていたのは小鳥だけ。お子さんたちは基本的に自信の方がありそうだったのが、印象的。
魔法マシマシの習先輩達のおうちに到着。普通にリビングに通してもらって、習先輩と清水先輩、それに小鳥と一緒に座る。
「あれ、お子さんたちはいないんですか?」
「あの子らには既に聞いたしね。後、あの子らはどっちかっというと」
「魔法があるし、何とかなる的な私達よりの考え方をしますし…」
なるほどです。あれ、それなら……。ちらっと視線を横に移す。
「あ、わたしですか?わたしはわたしで、多分、今まで聞かれたことがないからですね」
「愛理ちゃん達は聞かれてるのに?」
そのタイミングで小鳥も一緒に聞かれるんじゃないの? 完全に一緒に住んでいるわけではないとはいえ、同じ家……家? 敷地…かも怪しいけど、行き来簡単なところに住んでいるのに。
「まぁ、ずっと一緒にいるわけじゃありませんしおすし」
「おすし」
「ボケを深堀しないでください」
小鳥は顔を赤くしてプイっと背けた。ごめんて。
「ごめん」
「よろしい。口に出したので許してあげます。読みやすいからと言って無言だったらしばきました」
「それはそう」
僕だって多分、同じことされたら許さない。いや、さすがに暴力までは行かないかな…。っと、
「ごめんなさい。何の話を聞きたいのですか?」
「確かに。ごめん。習兄。四季義姉」
ちょっと話が逸れすぎた。小鳥と一緒にちょっと姿勢を正す。
「構わないよ。こっちが聞きたいわけだし」
「ですね。で、さっそく、本題なのですけど。自動運転絡みの話です」
「何かしらの解決の目途が立ったんですか?」
今のところ、「事故ったときの責任取る生贄に運転席に運転手が必要」ってのと「車に搭載するAIの命の選択基準を誰が、どう決めるか?」が問題だったんですよね?
「そ。カイが心の中で思ってる通り。その辺の目途が立った」
「あ。習兄。わたしも「その辺」の内容は言われなくとも隣見て察してるから言わなくても大丈夫」
2:2で話してるからいつもみたいに心読まれる前提で話が進まないんじゃない? と思ってたのに、進みそう。何でや。
「ですか。で、その解決策なんですけれど、いっそ彩に全部投げちゃおうかと」
「彩にですか?」
彩は既に色々ぶん投げられてる人工知能。そのお仕事は宅配ドローンの軌跡を考えたり、動画サイトに投稿された動画か規約を満たしているかを確認したり、制作者である豊穣寺先輩と一緒に何かしたりと多岐にわたる。
けど、その彩に投げて解決するとは思えないのですけれども。
「とだけ言ってもわかんないよね。補足するね。彩というときっと、二人がイメージしているのは」
「開発者である咲景さんをベースに生まれた彩ですよね?」
ですね。ていうか、それ以外に……あ。あ。いるわ。それ以外が。
「確か動画サイトの審査は豊穣寺さんをベースにした彩以外に、他の誰かをベースにした彩も合わせた10人体制でやってるんでしたか。……え。ごめんなさい。だから「え」…え?」
だから何です? って言い切る前に小鳥の「マジで言ってんですか」みたいな目と言葉が僕にぶっ刺さった。
うそん。それだけの情報で何か出来そうなこと、ある?
「ありますよ。まさか、習兄たち、AIに人格権的なものを認めるつもり?」
「そだよ」
「ですね」
お二人の言葉に絶句する小鳥。待って。待ってください。僕が、盛大においてかれています!
「単純な話ですよ、カイさん。彩のようなある種の人格を持ったAIは習兄たちなら容易に作り出せます。ですから、今の彩のようにドローンのルートも、動画サイトの検閲も行う多岐にわたる仕事をするAIを作るんじゃなく、」
「え。待って。今の流れは自動運転の話。てことは、まさか一台に一個、人格を持ったAIを搭載するおつもりですか!?」
首肯されるお二人。マジですか。…でも、それがどうして問題の解決に……あ。あー。
「事故ったときの責任を全部、AIにぶん投げるんですか」
「そ。十分な整備が日ごろからなされている。その前提ならAIに責任を負わせられる」
「もちろん、整備を怠ったのならばその度合いに応じて所有者も罰しますが。タクシー、バスなんかの会社所有のものは、どうすれば理解を得られるかが問題ですが…」
あのあの、それ以上にやばい問題が放置されてません?
「カイさんが思ってる通りだよ。AIに責任を負わせるとして、それで被害者は納得するの?」
「最悪、魔法で納得させる。でも、日本だしね。他の国よりは受け入れやすいだろうさ」
え。何故です。
「何でさ?」
「石ころにさえ神様が宿ると考える八百万信仰があるでしょう?車にだってそれを代表する精霊みたいなものがいてもおかしくない。その精霊がAIになったようなものです」
そう考えると確かにという感はありますが……。
「それ、SF映画みたいにAIに反乱されて詰まない?そんでもって、私みたいなAIの反乱を危惧する人は絶対に受け入れなくない?」
「されたらされたでそん時でしょ。でも、何かしらの手を打たないと駄目だよ?」
「今は少子高齢化社会ですからね。お隣の国々が日本以上のスピードで少子高齢化につっこみつつあるとはいえ、うちの国は昔から慢性的にその問題を抱え続けてきました」
「それなりに対策となる政策を実行させはしてるけど、正直、手遅れ感がないこともない。労働力は絶対に不足するよ?現に不足しつつあるわけだし」
それは……そうですね。物流に関しては2024年問題とか言われる人手不足。農業は言わずもがな。おじいちゃんおばあちゃんたちが都会の若者や老人を食わせてる。街中に出ればコンビニアルバイトの急募がそこらにある。
「カイが考えてるようなのは直近だと、金を投げれば解決するんだよね」
「必要なところにお金を投げないから人手が足りないんですよ。まぁ、そこの給料を上げちゃうとほとんどのもののコストとしてかなりのウェイトを占める人件費が上がるので…」
「人件費が上がる。利益が減ってしんどいから商品の値段が上がる。商品の値段があがるから相対的に貧しくなる。また魅力がなくなるの無限ループになるんだけど」
「それが経済成長なのでは……?」
そのループでは給料も上がっていますし。度合いにもよりますが、給料上がらんくせに物価だけ上がるスタグフレーションに比べればマシでしょう。いやまぁ、物価上昇に給料上昇が追い付かなければ意味ないですけど。
「でも、それをしたとて将来的に人手不足は発生しますよ?」
「だよね。カイさん。だって、絶対数が減り続けるよ?習兄。四季義姉」
一時的には解決しても、恒久的には解決しませんよね。恒久的に解決しようとするなら……。
「それこそ、方策はほとんど決まり切っていますよ」
「AIをぶち込むか、移民を入れるか、日本を小さくするしかないね」
習先輩がさも当然というような顔で断言された。どれも嫌は……無理ですよね。はい。
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