表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
相合傘 -千春と千秋 そのⅠ-  作者: 関戸守
第二章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
7/15

7.

 僕はその日、翌日友人と会う約束をしていたので一度帰宅し、二日後に何日か泊まれる用意をして、再び彼女の家に向かった。両親には「清掃関係の企業のインターンシップ」だと伝え、一週間ほど滞在し、彼女が僕にしてほしいことの一通りをさらった。やはり彼女はお金持ちの良家の人らしい、安上がりだけれども、時間のかかる在来線とバスの乗り継ぎではなく、遠慮なく新幹線を使いなさい、と、交通費や移動中にかかった食費などは彼女が全額持ってくれた。

 だが、どうして女性ではなく、男性である僕を採用したのかを聞くことは、すっかり忘れていた。

 夏休みが終わり、大学の後期の授業が始まってからは、金曜の授業を午前中しか入れていなかったので、その授業が終わり次第、すぐに学校を出て、東京駅で適当な弁当を買い、新幹線に乗って軽井沢へ。いつも車で迎えに来てくれる彼女と合流し、時にはアウトレットで買い物をして帰宅し、月曜の朝に東京に戻る、という生活を繰り返していた。季節が巡り、冬になると、雪かきの仕事も追加された。

 滞在中、僕には離れの一室が与えられた。彼女曰く、両親が健在だった頃は、彼らがここで寝泊まりしていたという。和室と洋室とがあったが、田舎の一軒家育ちの僕は和室に慣れていたので、そちらを選んだ。

 そして、期末試験も終わった二月、僕は両親と兄に、インターンシップで行った先で内定をもらったと伝えたが、彼らは大層喜んでいた。三年生の終わりまでに、卒業論文のゼミ以外の単位は既に完璧に取り終えており、それだと通学も月に一、二回程度だと先輩から聞いていたので、一人暮らしをしていたアパートを引き払い、履歴書に書くために何となくやっていた、配達系のアルバイトも辞め、完全に生活の拠点を彼女の家に移すことにした。

 ところが、引越業者に荷物の運搬を頼み、到着する日に、いつものように軽井沢に向かい、彼女の運転であの家に向かうと、引越業者が来る時間がまだであるにも関わらず、家の中に、見知らぬ男がいたのである。確かに、募集は二人ほど、とあの時の紙に書いてはあったが。

「初めまして、ここで一緒に働くことになりました、鎌谷健人です! 水戸さん、よろしくお願いします!」

「あ、うん、よろしく、お願いします……」

 長身の僕よりも背が低い、男性の平均身長ぐらいの男だった。普段、寡黙な性格だと自覚している僕とは真逆で、よく喋りそうなテンションの高い人であった。

 しかし、本邸と離れ、それにガレージ、どれも外見は立派ではあるが、ガレージはともかく、住まう建物の中はそれほど広くはなかった。これぐらいなら、お手伝いさんは僕一人でも十分ではないだろうか。僕はそんな疑問を抱いていた。

「えっと、これぐらいの広さなら、僕一人でも十分ではありませんか」

 鎌谷とやらは、僕と同じく、コーヒーが趣味だという、前回来たときにはなかったサイフォンでコーヒーの準備をしていた。手を洗いに洗面所に行きながら、彼女にその疑問をぶつけた。

「私も、最初はそのように考えていました。けれども、日曜はお休みにするとしても、週に六日、ずっと一人に、こちらが指定した家事をさせ続けるのも考え物だと思ったのです。ですから、二人での分担制にして、一人にかかる負担を減らそうと思いまして」

「なるほど」

「ええ。なので、また後で話し合いますけど、それぞれの得意なことを優先してもらって、そうでもないものについては、二人で手分けして、という感じがいいかなと。例えば、水戸さんはお料理が得意でしょう? でも、鎌谷さんはコーヒーやお茶を淹れるのは上手なのですが、お料理はあまり得意ではないようです。その辺を、上手く補いあっていければいいのではないでしょうか」

「そういう考え方だったんですね」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ